ID-012 潤滑油の製法について |
潤滑油は、高級潤滑油と並級潤滑油に分類することができます。 高級潤滑油は鉱物油系基油あるいは合成系基油に、使用する目的にかなった数種類の添加剤を加え、製造します。現在の車両用潤滑油、工業用潤滑油のほとんどがこの種類となります。 並級潤滑油は鉱物油系基油の混合製品で、マイルドな使用条件の油膜軸受油や電気絶縁油あるいは原料油として使用されます。かっては、精製度がマイルドな基油が多く供給されていましたが、基油に微量ながら含有される多環芳香族(PCA)が発がん性の疑いがあることから並級油の基油においても高度な精製処理がおこなわています。 以下に、潤滑油製造における要点について述べます。 I.基油について |
(1) | 鉱物油系基油は、中東原油を原料とするパラフィン系と中米あるいはオセアニアで生産されるナフテン系の2種類があります。ほとんどの基油はパラフィン系で一般の潤滑油に広く使用されます。ナフテン系基油は生産量が少ないため、切削油や空気圧縮機油、冷凍機油あるいは原料油など、一部でナフテン系の特性を必要とする製品に使用されています。いずれも原油からいくつかの分留工程・精製工程を経て製造されますが、この基油を一般に「ニュートラル油」と称しています。ニュートラル油は3〜4種類ですが、これにブライトストックと称する減圧蒸留残さ油をプロパンでアスファルト分を除去し、さらに精製された重質の基油があり、これらが潤滑油の基油となります。近年は鉱物油系半合成油として、ワックスを分解したり、メタンガスを合成させて生産される、不純物をほとんど含まない「高粘度指数基油(VHVI・XHVI)」も多く使用されています。 鉱物油系基油の簡単な精製工程を図1に示します。 |
(2) | 合成系基油は、PAO(ポリアルファオレゴマー)系、PAG(ポリアルキレングルコール)系、エステル系、アルキルベンゼン系、アルキルナフタレン系等、数々の種類が開発され、それぞれの特性を活かした潤滑油製品が販売されています。合成系基油の特性は鉱物油系と比較して、一般的には低温流動性がよい、熱安定性がよい、酸化安定性がよい、粘度指数が高いなど優れた点が多いのですが、なかには逆の特性を示すものもありますので使用に当っては十分な検討が必要です。 |
(3) | 圧延油や切削油の一部には動植物油が使用されております。また最近は環境保護の目的から『生分解性』が求められるようになり、植物油系基油が見直されつつあります。 |
II.添加剤について 添加剤は潤滑油の用途に応じて多種多様の種類があり、単一機能で使用される「コンポーネントタイプ」と複合した機能で使用される「パッケージタイプ」があります。添加剤の分類としては、酸化防止剤・防錆剤・極圧剤・摩耗防止剤・摩擦低減剤・消泡剤・清浄分散剤・粘度指数向上剤・乳化剤・流動点降下剤・腐食防止剤などがあります。 (添加剤の種類・効能等については、別途Q&Aをご覧下さい) これらの添加剤の作用は、
III.ブレンドについて 潤滑油は数種類の基油を適切な粘度に調整し、必要な添加剤をブレンドすることによって生産されます。生産方法としては次のような方法があります。
製品タンクに移送された潤滑油は、出荷のため品質検査を受けた後、計量器を経て容器に充填されます。容器は200Lドラム、20Lペール缶、18L角缶、4L缶、1L缶など、各種あります。ポリ容器製品もありますが、環境保護の点から回収する事が要請されています。 需要家の工場などのタンクへ直接納入する場合は、タンクローリーによって納入されます。 図2には基油から容器詰めまでの概略工程を示しました。 ![]() 図2 潤滑油ブレンド工程の一例 |