ID-349 潤滑油の油温変化と容積変化 |
潤滑油の油温変化にともなう容積変化について説明します。 例えば、タンク油量20,000L、標準タンク油温38℃で使用している場合、1℃油温が上下すればどの程度油量は変わるものでしょうか。 ご承知のように、潤滑油をはじめ一般の石油製品には、温度によって密度や体積が変化しますが、これらの変化する割合は、厳密にいえば油の化学的組成や分子量、あるいはその温度範囲によっても異なります。 しかし、通常の潤滑管理の立場では、それほど厳密に考える必要はなく、一般には、平均的な石油製品組成をもとに作られた各種の計算図表を利用すれば充分間にあいます。 表1はその一例で、平均的な石油製品の膨張係数を示したものです。表からおわかりにように密度が大きくなるほど、膨張係数は小さく───つまり温度による容積変化の割合は小さくなります。 |
密度[15/4℃]の範囲 | 膨張係数/℃ |
---|---|
0.6112〜0.6274 | 0.00162 |
0.6275〜0.6416 | 0.00153 |
0.6417〜0.6721 | 0.00144 |
0.6722〜0.7236 | 0.00126 |
0.7237〜0.7750 | 0.00108 |
0.7751〜0.8494 | 0.00090 |
0.8495〜0.9653 | 0.00072 |
0.9654〜1.0754 | 0.00063 |
さて、仮に38℃における測定密度を0.880程度の油と仮定して計算してみましょう。 まず、38℃における密度0.880を、標準状態における密度[15/4℃]に換算しますと、0.8947の密度となります。(この密度換算は、後述のJISの密度換算表を用いて行いますが、便宜的には、通常の温度範囲では1℃当たり約0.00065変化するとして計算してもほぼ同じ値が得られます。) この密度に対応する膨張係数を表から求めると、0.00072が得られます。つまり、この油の場合、1℃の油温変化があれば、1Lにつき0.00072Lの容積増減があるわけです。 したがって、このケースでは20,000L×0.00072=14.4[L/℃]の容積変化があることになります。この場合はタンク自体の容積変化は無視しておりますので、実際のタンク油面の変化を考える場合には、タンクの膨張係数も考慮する必要があります。 容積変化の場合は、このように比較的小さいものですから、実際上それ程問題にならないと思われますが、参考までに申し添えますと、温度が大幅に変わる場合には、この表で計算するとや々不正確になることがあります。 すなわち、この膨張係数は一応JIS規格ならびにASTM規格に標準値として採用されている数値ですが、適用温度範囲が20〜78℃となっていますので、これ以上の温度範囲でより正確に求めようとする場合には、計算が繁雑になりますが、JIS K2249「原油および石油製品の密度・重量・容積換算表」などを利用して求めることもできます。 |