ID-L236 レオロジーとは
 
 中川、神戸両氏共著のレオロジー1)の第1章に、次の言葉があります。
 「酒と蜂蜜の機械的性質を比べてみると大変違う。酒は器から杯へたやすく注ぎ込むことができるが、蜂蜜をかきまわすことは酒ほど容易ではない。酒は注ぎ易く、蜜は流れにくい。この相違の原因は何か、これを論ずるのがレオロジーである。」
 
 すなわち、レオロジーとは、物質の変形(Deformation)と流動(Flow)に関する科学であり、物質の力学的または機械的性質を対象とする科学であるともいわれます。
 
 次に、レオロジーの基礎となる二つの法則2)について示します。
 
1.フックの法則
 
 ゴムや鋼鉄のバネに力を加えると変形します。
 
 このとき、物体の内部に変形を元にもどそうとする内部応力が発生し、外力を取り除くと、物体は直ちに完全に元の状態にもどり、内部応力は消滅します。このような性質を弾性といいます。
 
 一般に、変形が十分に小さければ、外力の除去と同時に物体は完全に元の状態にもどりますが、変形がある限界を越えていると、完全には元の状態にはもどりません。この限界を弾性限界といいます。
 
 外力を加えたときに、直ちに一定の変形が起こって、時間によって全く変化せず、外力の除去と同時に変形が直ちに完全に消失するような場合、この弾性は完全弾性と呼ばれます。
 
 完全弾性においても、外力と変形の関係は複雑で、図1のbやcのように湾曲したりします。
 
 しかし、いずれも変形が十分に小さい範囲では、比例関係が成り立つと考えられます。これはフックが1660年に実験的に見い出した事実で、「バネの弾性力は伸びに比例する」と表現されるフックの法則です。

 
図1 完全弾性体
 
 
2.ニュートンの法則
 図2のような二重円筒容器に、重油、水ガラスなどを入れて、内筒に外力を加えて回転させます。
 
 このとき、内筒の変位は図3のように時間とともに直線的に増加します。変形は荷重がある限りどこまでも増加し、弾性体の場合の図1とは異なります。
 
 内筒が荷重に相応する一定の速度で回転し、次第に速くなっていかないのは、液の中に一種の抵抗力が発生し、外力とつり合っているからです。
 
 この抵抗力の原因を粘性といいます。
 
 流体(液体および気体)は、多かれ少なかれ必ず粘性をもっています。粘性流体は外力の存在する限り流動を続けますが、図3の時刻t2で荷重を取り除くと、その位置で静止して回復はしません。これも弾性体とは異なる挙動です。
 
 流体は一定の力に対応して一定の速度で流動しますが、力と流動速度との関係は図3の(C)のように種々のものがあります。
 
 図3の(C)の中で、線図aのように変形速度と力が比例する場合に、この流体はニュートン粘性を示すといい、ニュートン粘性を示す流体をニュートン流体といいます。
 
 これらは、通常の低分子液体(水、アセトンなど)や気体です。
 
 複雑な構造を持った液体(コロイド分散液、高分子溶液など)では、力と流動速度の関係が直線的となったり、さらに一定の力に対する変形と時間の関係が直線にならなかったり、外力を取り去ったときに回復が起こったり、変形速度と力の関係を示す線図が原点を通らなかったりします。
 
 これらは全て広い意味での非ニュートン流体です。
 
 通常の液体で外力と流動速度が比例するという関係は1678年にニュートンによって発表されたもので、ニュートンの法則とよばれます。

 
図2 粘性流動
 
 
 

 
図3 粘性流体
 
「参考文献」
  1)中川、神戸:レオロジー 第1章 みすず書房(1965)
  2)潤滑経済 Q&A、307、324(1992)
 
 

 
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