ID-L109C さび止め油の管理について
 
 さび止め油の主な品質劣化は、浸せき槽への異物及び他油の混入による汚染であり、この点に関する管理が図れるならば、さび止め性能の低下もなく、期間内のさび止め効果も保証されます。
 
 品質劣化の主な原因は下記のとおりですが、これらの管理が徹底していれば補給のみで大抵の場合は交換の必要はありません。しかし、小さな不注意から大きな事故が生じるので、安全を見て6ヶ月で全交換することが望ましいです。各原因に対する対策はつぎのとおりです。
1.金属粉やゴミの混入
 
 タンク下部のドレンコックより、定期的に夾雑物を抜き取ります。この方法の採れない場合はタンク底部の沈降物を除去すると共に、金属粉やゴミをろ過して使用します。夾雑物混入の激しい雰囲気においては、使用しないときはタンクカバーを設け汚染防止を図ると共に、定期的(2ヶ月毎)にさび止め性をチェックします。
 チェック項目:各さび止め油に規定されるさび止め試験、摩損性物質の確認試験(JIS K 2246)

2.清浄用溶剤の混入による希釈
 
 溶剤によって希釈されると、水置換性、指紋除去性、さび止め性等が急激に低下します。
 一般に50%の希釈を認めれば、どんな場合でも交換すべきであり、これを防止するには乾燥を充分に行なう必要があります。
 チェック項目:不揮発分、粘度など

3.水分の混入
 
 前工程の加工油が水溶性のものである場合は水分の混入が認められます。水分離性の良いさび止め油はタンク下部のドレンコックより定期的に抜き取る必要があります。一般にさび止め油に含まれる水分の許容範囲はO.3%であり(指紋除去形は除く)、これ以上含まれると交換すべきです。
 チェック項目:水分の測定、各さび止め油に規定されるさび止め試験

4.加熱による劣化
 
 塗布時の加熱温度が著しく高い場合は、添加剤の分解や劣化が起こり、さび止め性の低下を起こす危険があるため、規定温度内で溶融させることが必要です。
 チェック項目:腐蝕試験、各さび止め油に規定されるさび止め試験

5.溶剤揮発による変質
 
 溶剤の揮発したさび止め油は塗布しにくく作業性が悪くなり、必要以上の膜厚となり非経済的です。溶剤希釈形さび止め油の保管は必ず密閉容器を使用し、常温以上の場所で使用してはなりません。
 チェック項目:不揮発分、各さび止め油に規定されるさび止め試験

6.前工程油の混入
 
 前工程油が混入するとさび止め性が低下する場合があります。この場合、混入油分の特性に応じて混入量を定量し、さび止め性に影響しない最低量を決め、これ以上になった場合は交換するよう取り決めておく必要があります。
 チェック項目:混入油分量の測定、各さび止め油に規定されるさび止め試験

7.保管時の注意事項
 
 異物の混入を防ぐため、必ず密栓して保管すること。また、溶剤希釈形は低温環境で放置されると、油膜強化剤が分離、析出することがあるので、必ず、屋内に保管すること。
 さび止め油の管理について簡単に述べましたが、他の金属加工油剤は直ぐに結果が出るのに反して、さび止め油は長期間を要し、顕在化したときにはその被害は莫大なのものとなります。これが「沈黙の加工油剤」といわれる所以です。このため、管理を充分に行ない、トラブルを未然に防ぐ「防錆管理」が極めて重要と考えます。
 
 

 
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