ID-L195 潤滑油保管の問題点 |
工場で使用する潤滑油類は、常に適正な在庫を持ち補充に備えて置く必要があります。大容量に使用する潤滑油類は、ローリーによって直接貯蔵タンク(場合によっては運転タンク)に投入されますが、多くの場合はドラムや少缶類によって保管されています。 貯蔵タンクで保管される場合、ドラム缶や小缶類(20L缶や16kg缶等)で保管される場合、それぞれに問題点は存在します。以下、それらについて分類し示します。 |
T.貯蔵タンクの場合 |
(1)屋外地上タンク・・・・・地上タンクでは、昼夜の温度差が大きく、夜間にタンク壁面に凝縮水がつき易くなります。通常は壁面を伝い、タンク底に滞留することになりますので、定期的にドレンを切って排出すれば問題にはなりません。 しかし、ドレン切りを怠っていますと、新たにローリーから補油した時に、沈降している水や泥分が巻き上がり、たまたま同時に払出しをしますとこれら泥水分が設備機械に混入し、トラブルをおこすことになります。 |
(2)地下タンク・・・・・・・・・地下タンクには、直接土地に埋め込んだものと、地下室に設置したものがあります。いずれも、配管やフランジ部分の緩みや破損によって泥水分の混入が考えられます(逆に漏油もある)。 やはり、ドレン切りを励行すべきですが、埋め込み式の場合などドレン切りができない場合は、時々ペースト状のウォーターリボン(水分検知剤)を検尺棒の先につけてチェックするか、日々の受け払いと検尺によって保管数量に大きな誤差がない事を確認します。 また、油の受入口のネジ蓋を締め忘れたり、ローリー受入れ時にジョイント部を清浄にしなかったために、水分や塵埃が入ってしまうことがあります。 地下室(オイルセラー等)では、湿度が高いことも多く、換気をよくする工夫も大切です。 いずれにしても、定期的なタンク清掃を行なうことが必要です。 |
U.容器詰め類(ドラム缶、20L缶、16kg缶等)の場合 |
個々の保管方法についての前に容器詰め類の管理に共通した問題があります。それは、 |
@ドラムや小缶から誤って違った油を機械に給油してしまうこと。(特に、夜間など管理者が不在の時に起りやすい) →記号や番号を付けたり、ペンキで色分けをして保管し、誰でもわかるようにしておくことがよいでしょう。 |
Aドラムから、運搬容器に移し替える時、オイルポンプを混用使用してしまうこと。 →できるだけ専用ポンプ化することが望ましいのですが、本数が多くなるのも煩雑でよい事ではありません。潤滑油製造メーカーと相談して、保管品のグループ分けをし、かつ使用前には無添加油や共油で洗浄、端切りをして下さい。 また、使用したオイルポンプはオイルをぬぐい、ゴミが付着しないように、ケースに入れるなど、保管に配慮が必要です。 |
Bドラム缶から補給した残りの油を保管する時、ドラムキャップの絞め方が、甘いことが結構多く、後日白濁していたり塵埃が混入しているトラブルが起ること。 →たとえ油倉庫内と言えども、一旦開封使用したものは、内部の空間部分も増え、呼吸作用が多くなります。きつくキャップを締め、できればシート等で天板を覆っておくことを考えてください(特に屋外では必須)。 |
(1)油倉庫・・・・・・・・・ドラム缶や小缶類は、油倉庫に整理して保管することがベストです。保管台帳を作成し、購入時期の古いものから使用するようにします(先入れ先出し)。また、前述のように分別保管が難しい場合は、記号や番号の標記またはペンキ等で色分けすると良いでしょう。 オイルポンプや移し替え容器の運用・保管にも注意が必要です。 油倉庫内は、湿度を低くし塵埃等が浮遊しないようにして下さい。またこぼれた油は、すぐに拭き取って危険性のないようにすることも必要です。 |
(2)屋外貯蔵・・・・・・・小缶(20L缶以下の商品)類は、絶対屋外では保管しないで下さい。ドラム缶を保管する場合は、次の事に心掛けて下さい。 |
@ドラム缶は縦置きにしないで横置きにして下さい。縦置きでは天板に溜まった水が入ったり、錆が発生し、開口した時に中に落ち込む可能性があります。 また、横置きに際しても、図のように枕木を敷いて直接地面と接触しないようにすると共に、大小の口金がほぼ水平になるように並べます。 場所等の問題で、止むを得ず縦置きする場合には、ドラム缶をシート等で覆い風雨が当たらないようにして下さい。 |
Aドラム缶置き場は消防法などによって、設置場所が決められていますが、熱がこもったり、水はけの悪い場所は避けるようにして下さい。 |
B一旦、開封したドラム缶はできるだけ、油倉庫ないし工場内で保管するようにして下さい。この場合も天板をシート等で養生するようにして下さい。 |
(3)保存期間・・・・・・・潤滑油類の保存期間は、油種によってかなり幅があります。 一般に、金属加工油では添加量が多く、また活性のある添加剤が使われていることが多いので長期にわたると添加剤が分離沈降したり、濁りが生じたりします。金属加工油の保存期間は、製造メーカーに確認しておくことをお薦めします。 工場設備油では、油倉庫などの環境のよい場所で概ね1年程度とされています。 |
![]() 【図−1】屋外でのドラム缶の保管方法 参考資料;潤滑油協会編「潤滑管理技術研修会入門講座」 |