ID-028 2サイクルエンジン油の基油と添加剤
 
 
1. はじめに
 
2サイクルエンジンにはチェーンソウのような小さいガソリンエンジンから、重質油を燃料とする数万馬力の出力をもつ低速ディーゼルエンジンまでありますが、ここではガソリンを燃料とする小型2サイクルエンジン用オイルについて解説いたします。
 2サイクルエンジンの構造上、2サイクルエンジン油(以下2サイクル油)は燃料と混合される形でエンジン各部に運ばれ、最後に燃焼ガスとともに排出されます。そのため4サイクルエンジン油とは異なる組成が要求されます。
 
 
2. 2サイクル油の組成
 
2サイクル油は、基油と添加剤から成り立っています。そのほかに燃料と混合し易いように希釈剤が一般に添加されます。
(1) 基油について
 基油としては鉱油が主成分として使われることが多いのですが、用途によって各種の基油が使用されます。
スモークレス油について
 2サイクル油は燃料と混合されるため、2サイクル油の一部は燃焼して排出されますが、この時に一般に白煙として認められます。このため、モーターサイクル油として一般的に使用されている「スモークレスタイプ」といわれる2サイクル油には、白煙を減少させるためにポリブテンという合成油が鉱油の他に添加されています。ポリブテンはきれいに燃え易くて残さ物を残さず、ある温度以上になるとガス化してしまうために白煙となりにくい性質を持っています。残さ物が少ないために、ピストンや燃焼室内の汚れを少なくでき、排気ポートやマフラーの詰まりを減少させる効果があります。
レーシング油について
 レース用には耐焼き付き性や出力を重視して基油が選定されます。古くはひまし油が有名ですが、合成エステル油等も使われています。一般には排気煙の減少は考慮されていません。
生分解性油について
 最近では環境問題から、主に船外機用として生分解性油が注目されています。生分解性油には、水中のバクテリアによって分解され易いエステル油が主成分として使用されます。
(2) 添加剤について
 2サイクル油の添加剤には、ピストンを清浄に保つために清浄分散剤が添加されます。2サイクル油は燃焼したときに残差物を残さないように、油中灰分(主にカルシウム)は4サイクル油よりも少ない傾向にあり、船外機用では無灰性のものもあります。4サイクルエンジン油には必須成分であるアルキルジチオりん酸亜鉛は2サイクル油には効果が無く、むしろ悪影響があるために添加されることはまずありません。また、オイルは循環使用される事はないため、一般に酸化防止剤は添加されません。レーシングオイルでは極限の性能を求められるために特殊な添加剤が添加されることがあります。
(3) 希釈剤について
 2サイクル油は、特に分離潤滑(燃料タンク中でガソリンに混合するのでなく、オイルタンクが別にあるタイプ)の場合、ガソリンと混合し易いように、灯油留分に相当する希釈剤が添加されます。
 
 

 
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