ID-043 トランスミッション油について
 
 トランスミッション油の品質は、一般にSAE粘度分類で表される粘度−温度特性とAPIサービス分類で表される性能レベルの二つで規定されています。それぞれの分類を表1及び表2に示します。現在、トランスミッション油の粘度分類は乗用車ではSAE 75W−90、大型車ではSAE 80W−90もしくはSAE90が主流で、その性能レベルはGL−3またはGL−4です。
 トランスミッション油の要求性能としては、表3で示した項目があります。これらのなかでは、ギヤおよび転がり軸受けの焼き付き防止性、摩耗防止性および疲労寿命に優れていることが特に重要です。さらに、シフト操作性の向上を図るため、同期機構(シンクロ機構)における摩擦特性の向上、シフト操作力の低減が重要となっています。
 シンクロ摩擦特性の向上とは、シンクロ摩擦耐久性の向上やシンクロ引っかかり力の低減を意味します。シンクロ機構において、ギヤコーンとシンクロナイザーリング間の動摩擦係数が低い場合にはギヤ鳴きが生じ、静摩擦係数が高い場合にはシンクロ引っかかり(シフト二段入り)と呼ばれる不具合が生じます。これらを防止するため、高い動摩擦係数と低い静摩擦係数を持ったギヤ油が要求されています。また、最近では様々な種類のシンクロナイザーリングの材質が使用されるため、それらの材質に対して良好な摩擦特性を持っていることが要求されます。
 
 
表1 自動車用ギヤ油のSAE粘度分類。
SAE
粘度番号
150,000mPa・sを示す最高温度(℃) 100℃における動粘度(mm2/s)
最低 最高
70W −55 4.1
75W −40 4.1
80W −26 7.0
85W −12 11.0
80 7.0 <11.0
85 11.0 <13.5
90 13.5 <24.0
140 24.0 <41.0
250 41.0
 
 
表2 自動車ギヤ油のAPIサービス分類。
サービス分類 適 用
GL−1 低荷重、低速のマイルドな運転条件のスパイラルベベルギヤ、ウォームギヤアクスルならびに手動変速機に用いる。
GL−2 GL−1では不十分な荷重、温度および滑り速度条件で運転される自動車用、ウォームギヤ用。
GL−3 GL−2とGL−4の中間程度の耐荷重性を持ち、中程度の荷重、速度条件の自動車アクスルに用いるマイルドEPタイプギヤ油。
GL−4 高速・低トルク、低速・高トルクの自動車ハイポイドギヤ用マルチパーパスタイプギヤ油。
CRC L−19、L−20に合格するもの。
GL−5 高速・衝撃荷重、高速・低トルク、低速・高トルクの自動車ハイポイドギヤ用マルチパーパスタイプギヤ油。
アクスル試験、CRC L−42、L−37に合格するもの。
 
 
表3 トランスミッション油に対する要求性能。
 
要求性能
焼き付き防止性
摩耗防止性
疲労寿命
シンクロ摩擦特性
酸化安定性
熱安定性
清浄性
消泡性
銅合金腐食防止性
防錆性
有機材料との適合性
 
 
 

 
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