ID-L038 自動車トランスミッションのシフトフィーリングとは
 
 
「シフトフィーリング」とは、自動変速機(オートマチックトランスミッション:AT)の場合、変速時のショックや変速時間等をいい、手動変速機(マニュアルトランスミッション:MT)の場合、変速時のシフトレバーの操作性をいう。ATの場合変速時のクラッチの契合の摩擦特性が鍵であり、MTの場合一般に使用されているシンクロメッシュ機構における同期課程とスプライン部の摩擦特性が重要である。

ATの場合、変速はクラッチやバンドの締結を切り替えることにより、使用するプラネタリーギヤの歯車の組み合わせを変え行われる。したがってクラッチやバンドを締結するときの摩擦特性がフィーリングに大きく影響する。例えば契合途中の摩擦係数が低いと契合が完了するまでに時間がかかり、ドライバーは不快感を感じる。また契合終了時の摩擦係数が極端に高いとショックが発生するためこれも不快感を感じることになる。

このためクラッチ材および自動変速機油(ATF)には高い動摩擦係数と、相対的に低い締結終了時の摩擦係数、あわせて十分な締結力を保証する静摩擦係数が必要とされる。

MTは、例えば4速の変速機の場合、後進も入れて5組のギヤがあり、変速はこのギヤの組み合わせを選択することで行われる。かりに3速から4速に変速する場合FRタイプでは出力軸は3速のスピードで回転しているため4速のギヤ回転数とは異なっている。このままでは4速ギヤを出力軸に固定することが難しいので、ギヤの回転速度を摩擦力で合わせた(同期)後、固定する装置として、シンクロメッシュ機構が採用されている。

この機構は、一般的に鋼鉄製のギヤコーンと通常黄銅製(最近では樹脂製やペーパー製もある)のシンクロナイザーリングとギヤと軸を固定するためのスリーブで構成されている。ギヤコーンとシンクロナイザーリング間の動摩擦係数が低い場合には同期しないままスリーブとギヤの組み合わせ用の歯(スプライン)が互いにぶつかるためギヤ鳴きを生じる。また同期後、スリーブがシンクロナイザリングを押しのけてギヤのスプラインと組み合わさることでギヤの固定が行われる。このシンクロナイザリングを押しのける際、シンクロナイザリングとギヤコーンの間の静摩擦係数が高いと二段入りとか引っかかりとか呼ばれる不具合が生じる。これらを防止するため、高い動摩擦係数と低い静摩擦係数を持った手動変速機油(MT油)が要求される。

 
 

 
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