ID-058 ギヤ油の配合組成 |
自動車用ギヤ油の配合組成の概略を図1に示しますが、基油と添加剤からなっています。ギヤ油の約80〜90%を占める基油には、不純物である硫黄化合物や窒素化合物を取り除いた高度に精製されたものが使用されています。これらの基油は一般に流動点が高いため、添加剤として流動点降下剤が添加されています。マルチグレード油の場合には、基油にポリマーを配合し、低温での粘度特性を向上させています。 自動車用ギヤ油は、トランスミッション用と終減速機用ギヤ油に分けられますが、要求性能が異なるため、その添加剤の配合組成は若干異なります。 |
1.トランスミッション油の添加剤 |
ギヤや転がり軸受けの焼き付き防止、摩耗防止のための極圧剤と摩耗防止剤が配合されており、その添加量は5〜10%です。表1に代表的な極圧剤/摩耗防止剤を示します。現在の主流は、硫黄系極圧剤とりん系摩耗防止剤を組み合わせた、硫黄−りん系(SP系)添加剤もしくは、チオりん酸亜鉛系添加剤を配合したギヤ油が使用されています。極圧剤/摩耗防止剤の組み合わせにより、同期機構(シンクロ機構)で良好な摩擦特性が得られない場合、摩擦調整剤(FM剤)を添加する場合があります。 清浄性を向上させる目的で、清浄分散剤が添加されることもあります。また、トランスミッション油の消泡性が不良ですと、ブリーザーからオイルが吹き出してしまったり、その結果、油量の低下が起こる等のトラブルが発生します。それを防止するために消泡剤が配合されています。 |
2.終減速機油の添加剤 |
終減速機油は、面圧および滑り条件の過酷なハイポイドギヤを潤滑しなくてはならないため、トランスミッション油よりも優れた極圧性を要求されます。そのため、極圧剤/摩耗防止剤としては、SP系添加剤(表1)が約10%程度使用されます。SP系添加剤の配合量が多すぎると、シンクロ材、銅合金、オイルシール等を腐食または劣化させてしまいますので、配合量の最適化が必要です。 終減速装置にフリクションプレート式差動制御装置(LSD)が組み込まれ共通に潤滑されている場合には、チャタリングの発生を防止するために、摩擦調整剤を添加して低滑り速度時の摩擦係数を低下させています。この摩擦調整剤には、主にりん系添加剤が使用されます。 |
添加剤 | 化合物 |
---|---|
硫黄系極圧剤 | 硫化オレフィン 硫化油脂 アルキルポリサルファイド |
りん系摩耗防止剤 | 亜りん酸エステル りん酸エステル りん酸エステルのアミン塩 |
チオりん酸亜鉛系摩耗防止剤 | アルキルジチオりん酸亜鉛 |