ID-061 高圧絶縁油の脱水方法について |
電気絶縁油中の水分は、絶縁破壊電圧などの電気特性を低下させ変圧器内での漏電の原因となったり、早期劣化の原因となるため、高圧用だけでなく低圧用においても厳重に管理されています。 一般に鉱物油では、電気絶縁油製品規格として「30〜40ppm以下」とされています。(表1 各国の電気絶縁油 鉱物油の水分規格値 参照) 絶縁油は、潤滑油工場や各油槽所からの出荷に際しては、脱水処理を実施しております。 それでも、ロリー等での配送途中で水分や塵埃の侵入が考えられますので、発電所や変電所では変圧器への張込みに際しては、再度脱水処理をおこなうことが一般的です。 絶縁油の脱水方法として、代表的な方法は次の二つです。 1)真空脱気法 2)活性アルミナ濾過法 |
規格 | 分類 | 種類 | 水分規格値 |
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JIS | C2320 | 1種2号 | 規定しない |
1種4号 |
30ppm 以下(タンク) 40ppm 以下(ドラム) |
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IEC | Publ.296 | Class I |
規格上定めはないが、一般に 30ppm 以下(バルク) 40ppm 以下(ドラム)とする |
Class II | |||
Class III | |||
Publ.296 | Class IA |
規格上定めはないが、一般に 30ppm 以下(バルク) 40ppm 以下(ドラム)とする |
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Class IIA | |||
Class IIIA | |||
ASTM | D1040 | − | 35ppm 以下 |
D3146 | − | 35ppm 以下 | |
D3487 | Type I | 35ppm 以下 | |
Type II | 35ppm 以下 | ||
DIN |
57 370/ VDE 0370 |
Class A | 規定しない |
Class B | 規定しない |
(1) | 真空脱気法 先に述べた発電所や変電所での絶縁油の張込みに際して、あるいは変圧器メーカーでの工場充填用に多く採用されている方法です。 加温した絶縁油を真空容器内で滴下あるいは薄膜状で流下させ、水分を除去する方法で、同時に油中ガスも脱気することができます(新油時の油中ガスは変圧器の経時的劣化診断に影響を及ぼす)。絶縁油用の真空脱気装置は、運搬可能なキューピクルタイプもあり、通常は真空脱気槽と数ミクロンの精密フィルターがセットになっており、運転効率がよく精度も安定しているようです。 装置の概略を図1に示しました。 |
![]() 図1 真空脱気装置の概略 |
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この装置では、1パスで50〜60ppmの水分を10ppm以下に、汚染度もNAS5〜6級程度に浄油することができます。 | |
(2) | 活性アルミナ濾過法 絶縁油を活性アルミナを充填したフィルタ層に循環通油することによって、油中の水分を徐々に活性アルミナに吸着させ脱水するものです。精度は季節的な要因により変化する(水分;10〜30ppm)ほか、自らの補足水分量が多くなってくると効率が落ちるためしっかりとした管理が必要です。 用途としては、絶縁油メーカーの油槽所での脱水設備の他、発電所や変電所内の変圧器内部にパック状に充填され水分や絶縁油劣化物の吸着剤として使用されています。 装置の概略は図2・3に示します。 |
なお、一般工場で使用されている受電・変電設備での変圧器類も当初は上記のようにほぼ完全に脱水されて設置されておりますが、長年使用されると水分の侵入もないとは言えません。しかしながら、一般の潤滑油と同様な考えで浄油処理や更油をすると、水分や異物が混入し、逆に変圧器をも破壊しかねません。従って、安易な浄油処理は考えない方が賢明と考えます。必ず、変圧器メーカーもしくは専門の業者に相談して下さい。 |
![]() 図3 活性アルミナ封入変圧器の概略例
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