ID-066 摺動面油兼用切削油

 工作機械の摺動面には、テーブルの位置決め精度、送り精度を確保するため、摺動面油が供給されています。摺動面は通常、1kg/cm程度の面圧、1m/min以下の滑り速度に設計されており、混合潤滑、境界潤滑条件下で運転される場合が多いです。
摺動面油の主な機能は、
 1)低速移動時のスティックスリップの防止
 2)始動時のテーブルの浮き上がりの防止
 3)テーブルとレールの摩耗の防止
等です。
 主要成分は鉱物油、油性剤(脂肪酸、油脂、アルコール等)、摩耗防止剤(硫黄やリンを含有する化合物等)で、ISO規格により、40℃で、32、68、150、220mm/sの4種の粘度が規定されています。
 摺動面油兼用切削油には、不水溶性形と水溶性形がありますが、ここでは後者について説明します。
 多くの工作機械では、摺動面に吐出された摺動面油は切削油剤に洗い流されて、切削油タンクに流入する構造になっています。切削油にエマルション形が使用されている場合、タンクに流入した摺動面油は、エマルションの分離を促進する他、機械停止時に液面に広がって空気の溶け込みを阻害し、切削油の腐敗を助長します。
 摺動面油兼用切削油は、摺動面油の混入によって生ずるこれらの問題点を解決するために開発されたもので、原液で摺動面の潤滑を司り、タンクに流入された後は、エマルションとして水中に分散し、切削油として機能するものです。表1に摺動面兼用切削油の性状例を、表2に摺動面油との潤滑性能の比較を示します。兼用油は摺動面油に近い潤滑性能を有しています。

 

表1 摺動面油兼用切削油の性状例
外観 原液
  希釈液
赤褐色半透明液状
白色エマルション
比重 0.93 (15/4℃)
粘度 71mm2/s(40℃)
粘度指数 108.4
流動点 −5℃以下

 

表2 摺動面油兼用切削油の潤滑性能
  摺動面油兼用切削油 摺動面油
耐荷重能  6.0  4.5
OK荷重  6  3
摩擦係数  0.12  0.14
耐荷重能: 曽田式四球摩擦試験機、200r/m段階法
OK荷重: チムケン試験機、800r/m 10min
摩擦係数: 曽田式振り子試験機

 

 クーラントを張り込んだ後の油剤の補給は、摺動面から流入する油分でまかなわれます。したがって油種の統一と油剤費の削減が可能になります。
 しかし、切削油剤に含まれる乳化剤、アルカリ剤や防腐剤等によって、亜鉛や黄銅等が腐食されることもあります。給油装置の材質の変更等で対応できますが、それが困難な場合は、クーラントと摺動面兼用油を別のものにする工夫も行われています。
 
 

 
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