ID-078 マルチギヤ油の粘度について | |
・ | 自動車用ギヤ油には使用条件と用途による分類、すなわちサービス分類と粘度−温度特性で分類される粘度分類があります。前者のサービス分類はAPI(アメリカ石油協会)が、後者の粘度分類はSAE(アメリカ自動車技術者協会)がギヤ油の品質を規定しています。表1にSAE粘度分類を示します。 |
SAE 粘度番号 | 150,000 mPa・sを 示す最高温度(℃) | 100℃における動粘度(mm2/s) | |
---|---|---|---|
最低 | 最高 | ||
70W | −55 | 4.1 | − |
75W | −40 | 4.1 | − |
80W | −26 | 7.0 | − |
85W | −12 | 11.0 | − |
80 | − | 7.0 | <11.0 |
85 | − | 11.0 | <13.5 |
90 | − | 13.5 | <24.0 |
140 | − | 24.0 | <41.0 |
250 | − | 41.0 | − |
自動車は低温から高温まで色々な環境条件で運転されています。近年特に省燃費やシフト操作性改善などの要望からギヤ油の低粘度化が進み低温時の性能をアップさせています。一方、高温時の粘度不足による潤滑性(耐摩擦性、疲労寿命、歯打ち音等)への影響が問題となっています。そこで低温と高温での粘度を両方とも満足させるために粘度指数向上剤を添加したマルチグレード油が開発されています。例えばSAE75W−90は、高温ではSAE90の粘度に近く、低温ではSAE75Wの粘度に近いことになります。SAE85W以下の低温の規格とSAE90以上の高温の規格を満足すればマルチグレードギヤ油となります。例えば、米軍規格では表2のようにマルチグレードを規定しています。 |
MIL-PRF-2105E グレード | 150,000mPa・sを示す最高温度(℃) | 100℃における動粘度(mm2/s) | チャンネル点(℃) | 引火点(℃) | |
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最低 | 最高 | 最高 | 最低 | ||
75W | −40 | 4.1 | − | −45 | 150 |
80W−90 | −26 | 13.5 | <24.0 | −35 | 165 |
85W−140 | −12 | 24.0 | <41.0 | −20 | 180 |