ID-086 工業用潤滑油の添加剤について
 
 工業用潤滑油の分類として、設備や機械類の運転に必要な潤滑油(設備油)と、材料を加工して製品に仕上げるために必要な金属加工油とに分けることができます。
 (その他、電気絶縁油、熱媒体油、剥離油、ゴム加工油、削岩機油、インキや粘着剤などの原料油、流動パラフィン 等も工業用潤滑油として扱うことがあります。)
 
 設備油も加工油も、本来潤滑油が備えている潤滑性などを効率よく発揮させる為に、各種添加剤を添加しますが、おのずとその考え方が異なってきます。
 
 設備油は、設備機械類を長期にわたって安定して使用することが目的であり、加工油は材料をいかに効率よく加工生産するかが目的ですが、工具類の寿命延長なども考慮しなければなりません。
 
 設備油に使用される一般的な添加剤とその働きを表1に掲げました。
 
 最近は高精度な設備や機械が多く、潤滑油類も合成系の基油が採用される事があります。
 表2は各油種毎の添加剤の使用例です。
 金属加工油剤は、その特性や性能上多種多様な添加剤が使用されていますので、ここでは省略いたします。
 
表1 工業用潤滑油に用いられる主な添加剤
(単位;mass%)
  添加剤名 おもな働き 添加量
酸化防止剤 アルキルフェノール類
芳香族アミン類
リン酸エステル
ベンゾトリアゾール(BTA)
ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)
基油の酸化を遅らせ、基油の酸化劣化により生じるスラッジやラッカーの発生を防止する。
連鎖停止形と過酸化物分解形がある。BTAは金属に吸着して金属の触媒作用を低下させる。
0.1〜1
防錆剤 アルケニルコハク酸
スルフォネート塩類
アルキルアミン、エステル類
金属表面に強固な吸着膜を作り、水分を金属分子と結合させにくくする。
タイプにより、防錆効果の寿命が大きく異なる。
0.1〜1
消泡剤 ジメチルポリシロキ酸
エステル類
ポリアクリレート
極めて小さい粒子として油中に分散し、発泡時には泡の表面で界面張力の差により、泡の膜を破壊する。
放気性はポリアクリレートが優れる。
    ppm
1〜100
極圧剤 硫化油脂
ポリサルファイド
リン酸エステル
硫黄系やリン系が主体で、摺動部の境界潤滑状態において、摩擦金属表面と化学反応し被膜を生成し金属同士の接着を防止することにより摩耗、焼付きを防止する。 1〜10
摩耗防止剤 リン酸エステル
ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)
金属表面に低融点の吸着保護膜を形成し、摩耗を防止する。 0.5〜2
油性剤 オレイン酸、ステアリン酸
硫化油脂
高級アルコールエステル
金属表面に強固な吸着膜を形成し、摩擦低減摩耗防止をする。
摺動部の温度が比較的低温の使用条件に限られる。
0.1〜5
粘度指数向上剤 ポリメタクリレート(PMA)
オレフィン共重合体
潤滑油の温度変化に伴う粘度変化を小さくし使用条件を広げる。
粘度指数の改善に効果があるが、せん断を受けやすい。
1〜10
流動点降下剤 ポリメタクリレート(PMA) ポリブテン
ポリアルキルアクリレート
低温時に潤滑油中のワックス分が析出する時結晶固化を防止し、流動性を維持する。 0.1〜0.5
抗乳化剤 ポリオキシエチレン系界面活性剤 水分混入時のエマルションを破壊し、潤滑油と水分を分離しやすくする。 0.005〜0.5
 
 
表2 工業用潤滑油に添加されている主な添加剤
  酸化防止剤 防錆剤 消泡剤 極圧剤 摩耗防止剤 油性剤 粘度指数向上剤 流動点降下剤 抗乳化剤
工業用ギヤ油    
添加タービン油          
R&O油圧作動油        
AW油圧作動油    
軸受油        
摺動面油    
工作機械汎用油    
空気圧縮機油(レシプロ)        
空気圧縮機油(スクリュー)          
冷凍機油            
電気絶縁油              
○:添加されている
△:添加される場合がある
 
参考文献
  潤滑油協会「潤滑油入門講座テキスト」他
 
 

 
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