ID-352 鉱油系油圧作動油から水−グリコール系油圧作動油への切換えについて
 
 最近、現場での火災防止や消防法の規制強化に伴って難燃性作動油の使用量が増大しています。その中でも、難燃性および非危険物となりうることを評価し、水ーグリコール系油圧作動油が適用されるケースが増大していますが、ここでは、鉱油系油圧作動油がすでに入っている油圧システムでの水ーグリコール系油圧作動油へ切換えるにあたっての留意点を述べます。
 
 実際の油圧装置において水ーグリコール系油圧作動油は、多量の鉱油が混入すると乳化状態を呈したり、耐火性の低下、消泡性の低下、潤滑性の低下や夾雑物の抱き込みによるストレーナー閉塞など種々のトラブルの原因となります。
 
 このため、水ーグリコール系油圧作動油への切換えにあたっては、使用されている油圧機器や機器材料の確認と事前の充分なフラッシングが重要となります。
 
●切換えにあたっては、まず第一に、下記の項目について調査、確認を行うことが重要です。
(1) 油圧ポンプ
油圧ポンプメーカによっては、水ーグリコール系油圧作動油専用ポンプおよび部品の使用を要望するケースがあります。また、回転数の低減など運転条件の変更を要望するケースもありますので、油圧ポンプメーカの見解を確認し、場合によっては油圧ポンプ自体あるいは油圧ポンプ部品の取替えや運転条件の変更を行って下さい。
 
(2) 油圧バルブ
通常の油圧システムに使用されている減圧弁、リリーフ弁、切換え弁については何ら問題なく使用できますが、サーボバルブや比例式電磁制御弁などについては、機器メーカによって使用可否の判断が異なるため、サーボバルブ等を有するシステムの場合には油圧機器メーカの見解を充分確認して下さい。
 
(3) 金属材料
非鉄金属特に亜鉛、鉛、アルミニウムなどに対して反応性を有するので、これらの金属が油圧システム内に使用されていないか油圧機器メーカに確認し、使用されている場合には問題のないものに取替えて下さい。
 
(4) ゴム材料
油圧システム内での使用ゴム材料を確認し、ウレタンゴムが使用されている場合は加水分解を受け早期劣化を生じますのでNBR等水ーグリコール系油圧作動油と適合性のあるゴム材料に取替えて下さい。
 
(5) 樹脂
ゴム材料同様、油圧システム内で使用されている樹脂の種類について油圧機器メーカーに確認の上、もしポリカーボネート樹脂やフェノール樹脂が使用されていれば取替える必要があります。
最近、特に油圧タンクの液面計としてポリカーボネート樹脂が使用されるケースが多くなっていますが、水ーグリコール系油圧作動油により加水分解を受け、応力のかかった部分などにヒビ割れを生じ、油漏れを起こしますので、ガラス製かアクリル樹脂製の液面計に取替えて下さい。
 
(6) 塗料
水ーグリコール系油圧作動油は基本的に全ての塗料を溶解または剥離しますので、油圧タンク内面や配管内面などに塗装がなされていないか確認の上、塗装されている場合には塗装を除去して下さい。
 
(7) フィルター
水ーグリコール系油圧作動油は鉱油系油圧作動油に比べ密度が大きいためフィルター通過時の圧力欠損が大きくなると共に約40%の水分を含有するため、蒸気圧が高くギャビテーションを発生しやすい状況にあります。
このため、特にサクションフィルターはポンプの吸入抵抗を出来るだけ小さくする必要があり、フィルターの孔径は100〜150メッシュ程度のものを使用すると同時にポンプの吸込負圧が大きくならないようにフィルター自体の容量を十分余裕のあるものを使用して下さい。
また、フィルター材質はステンレス材が最適ですが、フィルターメーカに確認の上水ーグリコール系油圧作動油に適合するフィルターを使用して下さい。
 
●鉱油系油圧作動油よりの切換え時のフラッシング手順について
 
 前記留意点について十分な確認を行った上で、フラッシング作業にはいってください。
 この作業の一例を下記に示します。
 
フラッシング作業手順
(1)油圧タンク、油圧配管およびアキュームレータ内の残油の抜き取り。
(2)油圧機器および部品の交換作業を必要に応じて実施。
(3)油圧タンク内の清掃。
(4)油圧シリンダーのバイバス回路作成する。
(5)油圧シリンダー内の残油の抜き取り。
(6)水ーグリコール系油圧作動油専用フラッシング油の張り込み。
(7)フラッシング油の循環。
(8)フラッシング油の抜き取り。
(9)配管内残存フラッシング油のエアーパージ。
(10)油圧タンク内の清掃実施。
(11)フィルターの清掃または交換。
(12)本油の張り込み。
(13)各回路の復帰。
 
 以上が一般的なフラッシング作業例ですが、油圧シリンダ等前歴油が十分抜け切れない場合には、二次フラッシングを検討する必要があります。
 
 

 
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