ID-L051 脂肪酸エステル系作動油の特長 |
油圧作動油はその目的によって、R&O型や耐摩耗性型、高粘度指数型などがあり、さらに高熱材料加工設備や高熱体の近傍設備で使用される難燃性作動油があります。 脂肪酸エステル系作動油は難燃性油圧作動油に分類されますが、近年は生分解性の潤滑油がが要望されるようになり、この点でも最も有望視されています。 〔1〕難燃性作動油としての特長 |
1. |
W/Oエマルションや水グライコールのような含水系作動油は水分の蒸発による冷却効果や窒息効果によって難燃性を示しますが、脂肪酸エステル系は燃焼に必要なエネルギーが非常に大きいために燃えにくく、自己消火性を示します。 |
2. |
リン酸エステル系と比較して、粘度−温度特性が極めて良く(粘度指数が高い)、かつ流動点も低いため、鉱物系作動油以上の使用適応範囲を持っています。なお、潤滑性については、脂肪酸エステル・リン酸エステル共に、鉱油系耐摩耗性作動油と同等以上の性能を有しています。 |
3. |
組成にもよりますが、冷却水などの水分が混入しても、リン酸エステルのような急速な加水分解性を示さないので、浄油することにより継続使用が可能です。 |
4. |
使用方法・潤滑油管理は一般の鉱油系作動油と同等であり、取扱いが容易です。ただし、亜鉛、鉛などの金属は避ける必要があります。 |
5. |
耐熱性・酸化安定性に優れており、使用上の高温限界温度は150℃程度と言われています。しかし、使用中に着色しやすく色相の早期悪化がみられます。 |
6. |
脂肪酸エステル油は、260〜300℃の引火点を有していますので、消防法による危険物第4石油類の適用を受けますので貯蔵量等制約があります。 |
〔2〕生分解性作動油としての特長 |
1. |
CEC−L33−T−82による生分解性試験では90%以上の分解性を示します。さらに、基油の特性がよいため添加剤の添加量が少なくてすみ、生分解性油として有利です。 |
2. |
人に対する皮膚障害試験やミスト吸入試験においても毒性が少ないとされています。 |
3. |
脂肪酸エステル油の燃焼による発生ガスの組成においても、メタン・エタン・エチレンあるいはブテン量性体・プロパン・プロピレンなどが主体で有毒なガスの発生はないとの報告があります。 |
4. |
急性毒性についても「LD50;10ml/kg以上」と低い数が報告されています。なお、脂肪酸エステル油もその組成(化学的構造)によっては生分解性の劣るものもありますので、製品のカタログ等で確認して下さい。 |
参考文献 作動油ハンドブック潤滑通信社 主要メーカーカタログ |