| ID-L100 ビールのアルミ缶製造と潤滑油 |
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アルミ製のビール缶は一般に2ピース缶と呼ばれており、上蓋と下側のボデーから成り立っています。上蓋の製造工程は、まずアルミの板から蓋とタブ(蓋を開けるときに使う取っ手部分)をそれぞれプレス加工で成形します。その際潤滑油としては溶剤系やワックス系のプレス油が使用されます。次に蓋とタブをプレス機で組み立て、気密試験、塗装等を経てできあがります。 下側のボデーは上蓋と比べると工程が多くなります。まずアルミの板をカッパーと呼ばれる機械で打ち抜き(Blanking)、絞り加工(Drawing)を行い、深さ30〜40mm程度のカップを作ります。次にボディーメーカーと呼ばれる機械で再絞り(Re−Draw)、しごき加工(Ironing)を経て市販されているビール缶とほぼ同じ形ができます。その後、縁取り、洗浄工程、内外面の塗装等を経て、下側のボデーはできあがります。 ボデーの製造には、加工条件が厳しいため潤滑油の選択が重要です。それぞれの工程で使われる潤滑油は次のようです。 まずアルミの板はコイルの形でコイルメーカーから製缶メーカーに納入されます。その時にコイルには腐食防止、板の傷つき防止のため、リオイルと呼ばれる潤滑油が予め塗布されています。 次に、製缶メーカーではカップルブあるいはカップ油と呼ばれる潤滑油を用いて絞り加工でカップを成型します。引き続きクーラントと呼ばれる潤滑油を用いてしごき加工を行いボデー缶を成型します。絞り加工としごき加工は関連しており、潤滑油には幾つかの組み合わせが存在します。潤滑油には、缶を成型するための潤滑性、磨耗粉の分散性、被洗浄性、廃液処理性等の性能が求められます。 日本国内では、1980年までは鉱油ベースのエマルション型潤滑油を高濃度で使用し、カップ油とクーラントは兼用されていました。1980年代になると高性能品の登場により使用濃度の低下と共にカップ油、クーラントが専用化されてきました。高性能品の目的は缶の表面にできる黒筋の発生防止であり、潤滑性の向上のため合成エステル型エマルションが多用されました。その後製造ラインの清浄化、高速化対応のためソリューション型が多くなってきました。 このソルーション型は一般にエマルション型に比べて被洗浄性と冷却性に優れていますが、潤滑性と廃水処理性は劣るとの欠点がありました。しかし最近ではカップ油としてエステル型潤滑油、クーラントとして廃水処理性が良好なソルーション型水溶性潤滑剤の組み合わせにより、潤滑性、冷却性、廃水処理性、被洗浄性を満足する潤滑剤も開発されるようになりました。 |