ID-L120 蒸気、ガス、水力タービン油の違い
 
 
タービン油は、発電機の潤滑、冷却、シールなどの重要な役割を担うなど、多岐に亘る性能を必要とします。又、タービン油は他の多くの潤滑油とは異なり、一部を交換(メイクアップと呼ぶ)しながら10年以上に亘って使用される例も有り、長期間の品質の維持が求められます。
JIS-K2213に添加タービン油の規格が示されていますが、火力タービン、ガスタービン、水力タービンで使用するタービン油で必要な性能は次表の通りです。

表.タービン油の要求性能
酸化安定性 熱安定性 防錆性 消泡性 清浄分散性 極圧性
火力タービン
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ガスタービン
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水力タービン
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(△:減速機を装着している場合)

1.火力タービン油 現在、電力会社が運転する蒸気発電ユニットは、昭和30-40年代に運転を開始した20万KW程度の小規模ユニットから、最新の100万KW級の超臨界圧ユニットが運転されています。最新のユニットは蒸気温度が600℃近くに達し、タービン油には過酷な使用条件となっています。火力タービン油には、上表の性能を付与すべくフェノール系酸化防止剤をメインに、防錆剤、消泡剤などが添加され、酸化安定性を向上させる為に不純物を極限まで除去した水素化分解基油との組合せで処方されています。
又、原子力発電でも火力タービン油を使用します。
2.ガスタービン油 ガスタービン油の特徴は、熱負荷が蒸気タービン油より高いことです。ガスタービンの燃焼ガス温度は1000-1300℃で、最新の複合サイクル発電に組み合わされている高効率ユニットでは1500℃に達します。蒸気タービンに比べて軸受け表面の温度も高く、又、輻射熱の影響で油温は100-120℃に達すると言われています。この為、ガスタービン油では耐熱性の付与に重点を置き、高温時に揮発する性質のあるフェノール系酸化防止剤よりも耐熱性に優れるアミン系酸化防止剤が主に使用されています。組み合わされる基油は安定性に優れた水素化分解基油です。メーカーによってはガスタービンにフェノール系タービン油の使用を義務付けている例も有ります。 3.水力タービン油 山間部に位置し、無人化・自動制御運転される場合の有る水力発電所では、長期間のメンテナンス・フリーが要求されます。元々水力発電の潤滑系統は無添加タービン油が長く使用されてきたほど酸化劣化の条件は穏やかですが、基油と添加剤に起因するスラッジが油圧系統の弁作動不良を引き起こす例が増えてきました。現在の水力タービン油は、析出したスラッジを再度、油中に溶解させるために、酸化防止剤を含む添加タービン油に清浄分散剤を加えたタイプに置き換えられつつあります。
 
 

 
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