ID-S07 プレス加工油の種類と特徴について
 
 自動車ボディ等の部品などを作るときには、鋼板に高い圧力で金型を押しつけて加工しています。このような金属材料に強い力で金型が接触する部分に使われているプレス加工油の種類を表1に示します。
 この表のように、プレス加工油には、多くの種類があり、市販されている銘柄も非常に多くなっています。
 最も多く使用されているプレス加工油は、油性潤滑剤で、中でも「鉱油+油性剤+極圧添加剤」のタイプが大部分を占めています。極圧添加剤は型かじりを防止する目的で用いられています。
 また、最近環境問題の面から水溶性プレス加工油の使用も増加しているようです。
 
表1 プレス加工油の種類
 
状態 種 類 タ イ プ 用   途 特     徴
長   所 短   所

 
 
油脂潤滑剤
(鉱油、合成油)
@鉱油+油性剤 非鉄金属(銅、アルミ)の絞り @粘度的な調整が可能で、適応範囲が広く、ほとんどの絞り加工に使用可能
A添加剤を最適に選択することにより、かなりの深絞り加工にまで仕様できる
B防錆性を付与できる
C安価
@高粘度油が要求される場合、脱脂性、作業性が悪くなる
A温度による粘度変化により潤滑性能が変化し、高速清算の場合、発熱によって作業が不安定になる場合がある
B作業環境を汚染する場合がある
A鉱油+油性剤+極圧添加剤 ○銅・ステンレスの絞り
○一部銅合金・アルミ合金の深絞り
B絞り兼防錆油 特に長期保管が必要な鋼板の絞り(自動車ボディ等)
水溶性潤滑油 @エマルジョン
(大部分)
Aソルブル
Bケミカルソリューション
○ステンレスの深絞り(浴槽化学容器他)
○外観の美しさが要求されない鋼板の絞り(自動車フューエルタンク、ラジエータタンク、他)
@水との希釈倍率を変えることにより軽度の加工から難加工まで広範な用途に適用可能
A冷却性が高く高速生産が可能
@防錆性に劣る
A廃液処理が困難
B固形充てん剤が残存する

 
 
乾性潤滑被膜 @ワックス
A金属石けん
Bモリブデン
Cグラファイト
Dアクリルポリマー
E化成被膜(ボンデライト、ボンダリューベ)
○極難加工の場合の鋼ステンレスの絞り(自動車のバンパーシャーシー部品等) @潤滑性が高く、耐かじり性、表面保護効果に優れる
A防錆性に優れる(モリブデンは例外)
@脱脂性が悪い
A溶接性が悪い
B型上へ堆積する場合がある
C高価
プラスチックフィルム @ポリ塩化ビニール
Aポリエチレン
○ステンレスや鋼板で美観を要求されるものの絞り(自動車のバンパー・装飾部品、流し台等) @潤滑性、表面保護効果がきわめて高い
A材料メーカーが被膜をコーティングしている場合が多く、絞りの際には潤滑剤塗布の手間が不要
@フィルムのはく離が困難
A廃却処理困難
B除去前の溶接不能
C高価
「出典」
  プレス加工油Q&A 月刊トライボロジ1990.7 p44−45



 
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