ID-S10 さび止め剤と防錆処理について |
さびやすい金属製品をそのまま大気中にさらせば、変色や錆を生じる為、種々の手段で環境との接触を遮断し、防錆するのが、防錆処理です。防錆油による防錆処理は、「前処理」「防錆油塗布」「後処理」からなります。図1にその概要を示しました。 |
(1)前処理 防錆前処理とは、金属表面の汚れを除去し、防錆油を塗布するのに適した状態にすることです。 この前処理が終了したら、できるだけ早く防錆油を塗布することが必要となります。 イ)洗浄 表1に汚れの種類、金属材料、表面状態及び形状毎に最適な前処理方法を示します。 ロ)乾燥 洗浄した部品も、防錆油を塗布する際には、溶剤や水分を完全に除去することが重要です。 |
![]() 表1 前処理方法の適用一覧表 |
(2)防錆油塗布 |
イ)防錆油と一口で言っても、多種多様の商品が市場で使われています。この種類を分類すると、図2の通りです。 |
適油の選定は、対象物の曝露条件と期間、金属表面の状態に応じて、塗布油膜の強度と厚さを決め、乾燥型と不乾燥型の使い分けを行うのがよい。(表2)と考えられます。 |
乾燥型 | 不乾燥型 | |||||
透明皮膜 | 不透明皮膜 | 溶剤希釈型 | 液状型 | 半固体型 | ||
曝露条件 | 軽度 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
中程度 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
高度 | ○ | ○ | △ | ○ | ||
最も苛酷 | ○ | △ | ||||
金属表面の状態 | 平滑な場合 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
穴蝶条件間隔ポケットのある場合 | ○ | ○ | △ | |||
開放されている部分 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
外部遮断されている部分 | ○ | |||||
半永久的な塗装を必要とする部分 | ○ | ○ | ||||
塗布皮膜の性質 | 油状 | ○ | ○ | |||
グリース状 | ○ | |||||
乾燥し潤滑作用なし | ○ | ○ | ||||
透明 | ○ | ○ | ○ | |||
半透明、不透明 | ○ | |||||
除去容易 | ○ | ○ | ||||
除去比較的容易 | ○ | ○ | ○ |
ロ)サビ止め油の塗布にあたっては、製品の各必要個所を確実に遮断する様な方法を選ぶことが大切です。 |
一般的には、次の6法が採用されています。 ・浸漬(どぶづけ)法 ・流しかけ法 ・刷毛塗り法 ・ころがし塗り法 ・充填法 ・噴霧法 |
製品形状、作業スペースに応じて、適切な方法を選定します。 |
(3)後処理 |
防錆油処理を施した金属製品に対して、その保管や輸送の条件に応じて、防水防湿の目的をもって行う包装を後処理と言います。 |
具体的には、 ○包装紙による被覆(袋、テープ巻き、カバー) ○木箱・木枠詰め ○容器詰め の3種類があります。 工程としては、 |
|
の手順で進められます。包装材の選定にあたっては、耐油性、中性、耐水性及び防湿性を確認の上、実施します。 |
また乾燥剤としては、シリカゲルや活性アルミナをガーゼ等に封入して使用するのが一般的です。 |
「参考文献」 1)防錆技術便覧、日刊工業新聞社、(1962)、p108、p294 「出典」 防錆剤Q&A 月刊トライボロジ1990.8 p36−37 |