ID-102 アルミニウムの塑性加工油について
 
 
近年、アルミニウムは自動車の軽量化、省エネルギー化、リサイクル性の面から需要は年々増加している。さらに、アルミニウムの表面は酸化膜に覆われているため耐食性に優れる、熱伝導度が高いため熱を伝えやすい、磁性の影響を受けない、電磁波や熱を良く反射する等の特性を有し各方面での使用が増えている。しかし、アルミニウムは耐摩耗性に劣る、プレス成形性が悪い等の問題もあり、材料面からの改善が行われ種々のアルミニウム合金が開発されている。
また、アルミニウムの塑性加工品としては自動車、電機部品の他にアルミ箔、DI缶、熱交換機のアルミフィンなどが挙げられる。
自動車部品には一般に、Al-Mg合金の5000系やAl-Mg-Si合金の6000系が使用され、DI缶(飲料水用の缶)、アルミフィンにおいては、Al-Mn合金の3000系が使用されている。

アルミニウムの塑性加工においては、工具表面との焼付きが問題となる場合が多い。この問題を解決するために過去から潤滑に関する研究が多く行われている。
  1. 粘度の効果
    Nautiyalら1)は粘度の異なる3種の鉱油をもちいてA6061合金と鋼との焼付き試験を行っており、高粘度鉱油が耐焼付き性に有効であると報告している。
  2. 潤滑添加剤の効果
    古くからαオレフィンはアルミニウムの潤滑に対し効果のあることが知られている。Pierre2)らは1-セテンとセタンを用いてA1100のリングとワッシャーとの摺動試験を行った結果、表1に示すように物性値はほぼ同じ1-セテンとセタンではあるが、1-セテンは非常に優れた潤滑性を示すことが認められている。1-セテンが優れた潤滑性を示す理由として、1-セテンの二重結合がアルミニウム表面に強固な吸着膜を形成するためと考えられた。
表1 セタンと1-セテンのアルミニウムに対する潤滑性
試料 性状 摩擦試験結果**
項目 融点℃ 沸点℃ 動粘度* 荷重kg 摩擦係数
セタン 2.2 274 3.31 10 焼付き
1-セテン 18 287 3.73 10 0.1
*mm2/s,25℃
**試験条件 すべり速度:0.0001m/s

また、各加工においても適する潤滑剤の研究が行われている。まず、箔圧延においては、低粘度基油にアルコール、エステルおよび脂肪酸などの油性剤が使用され、「ヘリングボーン」と呼ばれる表面欠陥の改善に有効とされている。

一方、DI缶の加工においては、ドローイング工程には不水溶性のエステル系油剤が,またアイアニング工程にはエステルを主成分とする水溶性潤滑剤が2〜3%の濃度で使用されている。

以上
〈参考文献〉
1)P.C.Nautiyal and J.A.Schey, ASME Jour of Trib.,112,282(1990)
2)L.E.Pierre,R.S.Owens and R.V.Klint, Wear,9,160(1966)
 
 

 
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