ID-103 金属不活性剤について |
潤滑油は長期の使用中に高温にさらされたり、空気や混入した水分と攪拌され徐々に劣化してゆきます。 さらに、軸受や摺動部分では金属との接触のほか可動部分から発生する摩耗粉の一部が、油中に溶解して触媒となっていっそう潤滑油の劣化を早めます。(金属単体でも触媒効果があるとも考えられています。) 金属の表面に薄い皮膜を作り、潤滑油分子(炭化水素)と金属とが直接接触しないようにすれば金属の影響を和らげることができます。 あるいは、潤滑油中に溶け出した金属と反応させ、不活性な金属化合物とすれば同様に触媒作用を抑えることができます。 このような作用によって、間接的に潤滑油の酸化劣化を遅らせ、寿命を延ばすことが可能となります。 こうした目的で添加する添加剤を、金属不活性剤と呼びます。 図1は、鉄と銅などの金属の触媒としての影響度を示したものです。 ![]() 図1 鉱物油の酸化に対する金属触媒の影響 金属不活性剤のこの作用は逆に言えば、劣化した潤滑油から発生した有機酸や外来の腐食性の物質から金属表面を保護し、腐食を防ぐ役目を果たすことにもなります。このため、金属不活性剤は腐食防止剤として分類されることもあります。 金属不活性剤には、溶解金属(金属イオン)と反応して不活性な物質(キレート化合物)を作るタイプのものと、金属表面に付着し保護皮膜を生成するタイプのものがあります。 代表的なものとして、前者ではチオカルバメート類やサルチル酸系が、後者ではベンゾトリアゾール(BTA)やイミダゾール、チアジアゾール系などがありますが、これら後者の方が工業用潤滑油添加剤として広く使用されているようです。 BTAは油に難溶性のため、最近は溶解性を高めたBTA誘導体も多く使用されています。 図2はベンゾトリアゾール(BTA)をタービン油に添加した場合の効果について表した図です。 ![]() 図2 タービン基油に酸化防止剤、 BTAと酸化防止剤を添加した場合の効果比較例 |
参考文献 新版 石油製品添加剤 幸書房 |