ID-104 切削油剤中への油分の混入について 切削油剤は金属を削ったり(切削)、磨いたり(研削)するときに使用するもので、その目的は潤滑や冷却や切り屑の排除などです。ここでは、切削油剤に他からの油分(例えば前工程油、潤滑油、作動油など)が混入した場合の問題点について述べます。1.切削油剤交換時期の判定基準 切削油剤は長期間(例えば数カ月〜数年)使用するものですが、いろいろな理由で交換する必要があります。表11)は切削油剤の交換時期の判定基準を調査した結果です。 |
理由 |
比率(%) |
---|---|
腐敗進行 |
23 |
切りくず処理 |
15 |
定期的交換 |
13 |
外観の変化 |
13 |
他油の混入量 |
13 |
工具寿命低下 |
6 |
分析結果 |
6 |
さび止め性低下 |
4 |
季節により交換 |
4 |
油剤メーカー指示 |
2 |
その他 |
1 |
この調査(1993年)では、他油分の混入量によって決定した場合が約13%になっています。 また他油分の混入が原因のひとつと考えられる腐敗進行や外観の変化なども交換の原因となっています。 2.切削油剤に対する他油の影響と管理 |
(1) | 不水溶性切削油剤 |
不水溶性切削油剤に他油が混入した場合、例えば粘度の低い油が混入すると粘度低下による潤滑性不足を招くことになり、工具寿命の低下や仕上げ面粗さの悪化という事態が起こり得ます。 したがって、粘度測定や成分分析などを管理項目として行えば、長期間の使用が可能となります。 また、潤滑油や作動油などの使用量を常時記録することで不測の事態に対応することもできます。 |
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(2) | 水溶性切削油剤 |
図1に水溶性切削油剤に対する他油の影響を示します。水溶性切削油剤に他油が混入した場合、種々の要因により、切削油剤の性能が低下することがあります。 他油には例えば潤滑油、作動油、さび止め油、前加工油などが考えられます。これらが水溶性切削油剤に混入してくると、(a)微生物の栄養源になる(b)機械停止時にタンク表面を覆い腐敗臭が発生油剤成分が他油に移行するなどの現象が起こり、ひいては腐敗促進、濃度低下、潤滑性低下などの問題が起こる可能性があります。 したがって他油の混入には十分注意する必要があります。油分測定や成分分析などを管理項目として行うとともに、オイルスキーマーなどで混入油分を排出することも効果的です。 また、潤滑油や作動油などの使用量を常時記録することで不測の事態に対応することもできます。 このような管理により、切削油剤を安定に長期間使用することが可能になります。 | |
図1 水溶性切削油剤に対する他油の影響 ![]() |
[参考文献] 1)第55回切削油技術研究会 総会資料 |