ID-106 切削油剤の加工性能の評価

 切削油剤には工具寿命の延長、仕上げ面粗さや加工精度の向上、消費動力の低減などを目的として油性剤や極圧剤などの潤滑剤が使用されています。これらの潤滑剤は工具と切屑および工具と加工面との間の摩擦抵抗を減少せしめるとともに、構成刃先や溶着物の発生を抑制する働きを持っています。
 切削油剤の加工性能は一般に「摩擦試験」、「切削試験」の2方法で評価します。
 
 
1.摩擦試験
 
 摩擦試験は四球試験機、チムケン試験機、ファレックス試験機などを用いて、耐荷重能や摩耗量および摩擦係数などを求めることによって潤滑性を評価するものです。したがって、切削加工とは異なり塑性変形や切屑の生成を伴わない線または点接触での評価のため、実際の切削加工との相関性に乏しいのが欠点です。このため、摩擦試験は操作の簡便さを生かして潤滑剤の基礎的研究などに活用する場合がほとんどです。
 
 
2.切削試験
 
 加工性能の評価は本来実際に適用する加工機を用いて行うのが最良の方法ですが、経済的、時間的リスクが大きいため、タップ加工などの比較的簡便な方法により切削抵抗、切削比およびせん断角などの切削機構上の特性値を測定して切削油剤の加工性能を評価する場合が少なくありません。しかし実際は加工方法、加工条件、および被加工物材質などの相違によって切削油剤の加工性能は大きく異なるため、一つの試験機で得られた評価結果があらゆる加工方法や加工条件に対応できるわけではありません。またそのような普遍的な評価方法も確立されていません。そのため、現状では対象とする加工方法をスケールダウンするか、またはその切削機構を解析し定量的に評価できるシミュレート試験方法を各社独自に開発して加工性能の評価を行っています。
 以下にその一例として、ブローチ加工を対象とした試験機により切削油剤の加工性能を評価した結果を紹介します(図1)。この試験機は切削速度、工具形状、被加工物材質を任意に設定できます。
 

図1 ブローチ試験機の概要

 
 
 図2に評価結果を示しましたが"油剤3"の優れた加工性能は実際のブローチ加工においても確認されています。
 

図2 ブローチ試験機による切削油剤の性能評価結果

 
 
[参考文献]
  小原、小鹿,PETROTECH,12(12)74(1989)

 
 

 
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