ID-330 切削油剤による皮膚炎について

切削油剤は、仕上げ面品位の向上、工具寿命の延長、切りくず処理などを目的とし、切削加工現場で多用されています。ここでは、切削油剤による皮膚炎の発生要因や対策などについて述べます。

1.不水溶性切削油剤について

(皮膚炎について):
油分の刺激による油性皮膚炎(油まけ)、毛穴あるいは汗腺をふさぐことにより発生する油疹(毛のう炎)、脱脂作用による皮膚の乾燥(ひび割れ)などがあります。

(鉱油の影響):
組成面から見ればベースオイルである鉱油の刺激が大きいことになります。鉱油はパラフィン系、ナフテン系および芳香族系鉱油に大別されます。皮膚刺激の強さはつぎの通りです。

皮膚刺激
芳香族系鉱油 > ナフテン系鉱油 > パラフィン系鉱油
したがって、芳香族成分の少ない鉱油を使用するのが好ましいことになります。また、浸透性の高い(粘度の低い)鉱油ほど、一般に皮膚刺激は強くなります。

(添加剤の影響):
極圧添加剤などの一部には皮膚刺激が強いものがあるため要注意です。

2.水溶性切削油剤について

(皮膚炎について):
皮膚がふやけてかさかさになったり、ひび割れを生ずることが多く、症状は家庭洗剤による主婦の手荒れに類似しています。原因は、界面活性剤により皮膚の脱脂が起こり、皮膚の保護機能が低下しているところをアルカリ性物質が刺激することによります。

(PHの影響):
希釈液のPHは一般に8.0〜10.5ですが、PHの高い程皮膚刺激は強くなります。

(浸透性の影響):
浸透性(洗浄性)が高いほど、皮膚刺激が強くなります。ソリューブルタイプはエマルジョンタイプと比較すると一般に皮膚刺激が強い傾向があります。また、必要以上の高濃度で使用すると皮膚炎を起こすことがあります。

3.皮膚炎対策について

皮膚炎を防止するためには、油剤の品質を見直すとともに衛生管理面でも総合的な対策を採る必要があり、以下の対策が有効です。

(1) 清潔な衣服で作業し、油剤のしみた衣服が皮膚に接触することを避ける。
(2) 刺激性の少ない石けんで作業後に手洗いを励行する。
(3) 保護クリームの両手への塗布
不水溶性油剤を使用する場合には、作業開始前に耐油性クリームを塗布する。水溶性油剤を使用する場合には、作業開始前に耐水性クリームを塗布する。
(4) 油剤の飛散防止装置を設ける。
(5) 作業の自動化
(6) アレルギー性の作業者は配置転換する。

参考文献
1)永井 隆吉、野村 茂、産業皮膚科学 医歯薬出版(1987)
 
 

 
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