ID-344 水溶性切削油剤のゴムに対する影響 |
ゴムは機械のシール材に多用されていますが、ゴムが水溶性切削油剤から受ける影響は2つに分けられます。1つは物理的変化によるものであり、1つは化学的変化によるものです。物理的変化は、水溶性切削油剤がゴムに吸収されたり、ゴム中の添加剤が水溶性切削油剤中に溶解することにより起こります。水溶性切削油剤のゴムへの侵入が材料内部からの溶出よりも多い場合、ゴムは膨潤し、逆に溶出が水溶性切削油剤のゴムへの侵入よりも多い場合、収縮すると考えられます。化学的変化はゴムの分解が優先的な場合は軟化劣化、架橋が優先する場合は硬化劣化が生じます。そして実際におこるゴムの変化は普通、物理的、化学的変化が複合して起こります。 ゴムの膨潤や収縮、軟化劣化や硬化劣化によって生じる寸法変化が大きくなると、シールの機能に支障を来します。ゴムに対する水溶性切削油剤の影響による事故を防止するために、少なくとも水溶性切削油剤に対するゴムの耐性に問題がないかを技術資料などで確認することが必要です。表1にゴムの耐油性、耐薬品性を、表2に水溶性切削油剤を用いて、ゴムの浸漬試験を行った例を示します。 |
ゴムの種類 (ASTM略号) |
ニトリルゴム (NBR) |
アクリルゴム (ACM) |
フッ素ゴム (FKM) |
シリコンゴム (Q) |
ハイパロン (CSM) |
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潤滑油 | A | A | A | B | B |
ガソリン | B | C | A | D | C |
脂肪族炭化水素 | A | B | A | D | B |
芳香族炭化水素 | D | D | B | D | D |
塩素系溶剤 | D | D | A | D | D |
アルコール | A | D | B | C | A |
水 | A | C | A | A | A |
希 酸 | B | C | A | B | A |
濃 酸 | D | D | A | D | B |
アルカリ | B | D | C | B | A |
表2 ゴムの浸漬試験結果(60℃、10日間浸漬後のゴムの状態) ![]() 注)水溶性切削油剤は20倍に希釈して試験に供した。 表示;◎:良 ○:可 □:劣 △:不可 水溶性切削油剤のタイプ別ではセミケミカルタイプは比較的ゴムに対する影響が少なくなっています。しかし、水溶性切削油剤は、同一の油種でも製品によりその組成が異なるので、注意が必要です。特に最近のシンセティックタイプでは使用している合成潤滑剤の種類にヨっては、ゴムに対する影響が大きくなる事があるので注意が必要です。 ゴムの種類ではフッ素ゴム(FKM)が最も水溶性切削油剤の影響が少ないようです。またシール材に多く使用されているニトリルゴムに関しては、同じニトリルゴムでもその種類によって水溶性切削油剤から受ける影響には大きな差があります。このような傾向は他のゴム材種においても認められます。 したがって、水溶性切削油剤のゴムへの影響を調査するのに、資料だけでは十分ではない場合が多く、実際に浸漬試験でその影響を確認した上で使用することが望ましいと言えるでしょう。 |
「参考文献」 日本ゴム協会東海支部編:ゴム技術のABC,日本ゴム協会東海支部,(1973) |