ID-346 水溶性切削油剤のプラスチックに対する影響
 
 工作機械とコンピュータの組み合わせによるシステム化により、工作機械は目覚ましい進歩を遂げています。これにともない切削油剤に対する関心も高まり、切削性に加えて工作機械の周辺部品への影響が重要視されるようになって来ています。
 
1.プラスチックの分類
 
 工作機械に取り付けられる窓カバーなどの材質は、工作機械メーカー毎に異なりますが、一般的には、ポリカーボネートやアクリル系樹脂が使用されるようです。
 一般的なプラスチックの分類を図1に示します。
 

 
図1 プラスチックの分類
 
 
2.プラスチックの耐薬品性
 
 水溶性切削油剤には、アルカリ成分や塩類が添加されており、これらの薬品に対するプラスチックの耐薬品性を表1に示します。

表1 プラスチックの耐薬品性(10段階評価)
分類 種  類 有機溶剤 塩 類 アルカリ類 酸 類 酸 化





塩化ビニル(硬質) 10 10 10
塩化ビニル(軟質) 10 10 10
塩化ビニリデン樹脂 10 10 10
ポリエチレン 10 10 10
ポリプロピレン 10 10 10
ポリスチレン 10 10 10
ABS樹脂 10
メタアクリル樹脂 10
ナイロン66 10
ポリアセタール 10
ポリカーボネート 10
塩素化ポリエーテル 10 10 10
アルキド樹脂 10
アリル樹脂(成形) 10 10
アセチルセルロース
ジアリルフタレート(強化) 10
弗化ビニリデン 10 10 10 10





フェノール樹脂(成形) 10 10
フェノール樹脂(強化) 10 10
ユリア樹脂(成形) 10
メラミン樹脂(成形) 10
不飽和ポリエステル樹脂(耐薬品性) 10
不飽和ポリエステル樹脂(強化) 10
エポキシ樹脂(強化) 10
シリコーン樹脂
ポリウレタン樹脂 10
(注)数字が大きい程、耐薬品性が良い。
 
 上記の評価は、応力や温度条件、薬品の組み合わせになどの使用条件によって変わりますので、大まかな目安として下さい。
 
3.プラスチックに対する切削油剤の影響の評価方法
 
 ASTM F484-83に規定する応力ひび割れ試験方法に準拠した試験方法を、以下に示します。この方法は、図2に示すような装置を用いて、試験片にてこ状の荷重を加えたときに、試験片に生じる損傷の程度を判定するものです。
 ASTMでは、試験片の種類に応じて試験荷重が規定されています。なお、試験油剤は、てこ支点中央に置いたガーゼに含浸させ、経時におけるガーゼ裏面に生じた亀裂の程度、変色の有無を観察します。
 
 

 
図2 試験方法概略図(単位:mm)
 
 
4.プラスチック部品を使用する上での注意点
 
 工作機械に使用されるプラスチック部品は、取り付ける際に切削加工や穴あけ加工が行われ、(1)加工部樹脂表面に熱歪みの生成、(2)加工面から切削油剤成分の浸透、などを生じる場合があり、亀裂発生の要因となります。
 したがって、作業終了時には、樹脂表面に付着した油剤成分のふき取りが必要です。
「引用文献」
  小松ら:日石レビュー,36(4),(1994)
 
 

 
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