ID-L084 切削油剤の希釈水について
 
 ご存じのとおりクーラントの90%以上を占める希釈水は、水溶性切・研削油剤の性能が正常に維持・発揮される上で無視できない存在です。
 
 図1に希釈水として望ましい水の性状を示しましたが、pHは7.0に近いほど、またその他の性状に関しては“良”の範囲内で値が小さいほど希釈水として適していることは言うまでもありません。
 

 
図1 希釈水の性状
 
 
 ここで、硬度やりん酸イオン、バクテリアが多い希釈水はクーラントの腐敗を促進し、塩素イオンや、硫酸イオンの多い希釈水はさび止め性に悪影響を及ぼします。陰イオン濃度とさび止め性との関係を表1に示します。

表1 陰イオン濃度とクーラントのさび止め性
クーラント ソリューションタイプのクーラント
陰イオン 希釈倍率 20 30 40 50 70
硫酸イオン濃度(ppm)
(SO42-
50
500
1000 ×
1500 × ×
1999-2003 × × ××
塩素イオン濃度(ppm)
(Cl−)
50
200
400 ×
600 × ××
800 × ××
<さび止め性の表示法>  (良好) ◎ > ○ > △ > × > XX (不良)
 
 
 最近、地球環境への配慮から環境汚染を防止するための取り組みが積極的に推進されていますが、このような背景から切削油剤の廃液削減への取り組みも行われきており、今日水溶性研削液の液寿命は急速な延びを示しています。最近では、液寿命が3年を越えることも珍しいことではなく、また全更液は行わないで半更液を繰り返すケースも見られます。
 
 このように液寿命が長くなってくると、希釈水中に含まれる陰イオンのクーラントへの蓄積が大きな問題となります。
 
 希釈水に起因する陰イオンの蓄積は、油剤の性能や設備面には全く関係がない問題であり、水の蒸発が防げない限り確実に上昇を続けることになります。
 
 水分の蒸発に伴う陰イオンの蓄積の例を図2に示します。
 

 
図2 水分の蒸発に伴う陰イオンの蓄積の例
 
 この様な状況をふまえて、クーラントを長期間安定的な状態で管理するための手法の一端を以下に紹介します。
 
【希釈水から見たクーラントの管理手法について】
 
 @
クーラントの管理濃度
陰イオンの蓄積に比例して管理倍率を下げる(濃度アップする)(図3
 
 A
希釈水の水質改善
使用期間が長期化すれば、陰イオンの上昇は避けられません。
 
 そこで、陰イオン交換樹脂やRO等の水処理設備の導入により陰イオンの蓄積を抑制することが望まれます。
 
 また、陰イオンが多く含まれているということは、硬度成分が多い可能性があり、スカム生成に伴うさび止め成分の消失という側面も考慮する必要があります。
 

 
図3 陰イオン濃度と使用液管理濃度
 
 

 
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