ID-L093 切削油剤の内容成分と被削材に与える影響
 
 
1.切削油剤の内容成分
切削油剤には不水溶性と水溶性がありますがその内容成分例を表1に示します。

表1 切削油剤の内容成分例
成 分 種 類
基油および油性剤 鉱 油:マシン油など
合成油:ポリオレフィン油、ジエステル油、ヒンダードエステル油類など
油脂類:植物油系油脂、動物系油脂
エステル類:植物油系油脂のエステル、(米ぬか油のメチルエステル、パームメチルエステルなど)
極圧剤 塩素系:塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸、塩素化脂肪酸エステルなど
硫黄系:硫化鉱油、硫・塩素化油脂、硫化油脂、ポリスルフィドなど
りん系:フォスフェート類、フォスファイト類
有機金属化合物:ジアルキルジチオりん酸亜鉛、モリブデン化合物
界面活性剤
アニオン系: 脂肪酸誘導体(脂肪酸石けん、ナフテン酸石けん) 脂肪酸エステル形(長鎖アルコール硫酸エステル、動植物油の硫酸化油) スルホン酸形(石油スルホン酸塩)
非イオン系: ポリオキシエチレン系(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステルなど) 多価アルコール系(ソルビタンモノ脂肪酸エステルなど) アルキロールアミド系(脂肪酸ジエタノールアミドなど)
さび止め剤 有機系:カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アミン系など
無機系:リン酸塩、ほう酸塩、炭酸塩、モリブデン酸塩など
カップリング剤 アルコール:イソプロピルアルコール、多価アルコールなど
非鉄金属防止剤 窒素化合物:ベンゾトリアゾール、イミダゾリンなど

硫黄・窒素化合物:チオジアゾールポリスルフィド、アルキルジチオベンゾイミダゾールなど
その他:ジアルキルジチオりん酸亜鉛など
フェノール系:フェニルフェノール、テトラクロロフェノール、など
ホルムアルデヒド供与体:ヘキサハイドロトリアジンなど
その他:トリブロムサリチルアニドとジブロムサリチルアニリドの混合物
その他 消泡剤:シリコーン、シリコーンのエマルジョン、高級アルコールなど


2.極圧剤と油性剤
極圧剤は、高温の切削点で化学的に反応して金属表面に固体潤滑皮膜を形成し潤滑作用を示します。また、油性剤は極圧剤に比べて低い温度で作用します。これは、極圧剤は被削材との化学反応により潤滑皮膜を生成するのに対し、油性剤は被削材に吸着して潤滑皮膜を形成しますが、吸着力が弱いために高温になると表面から脱離してしまうため潤滑効果を失ってしまうためです。このように極圧剤は被削材と化学反応するため、被削剤に与える影響を考えると、不水溶性油剤の場合では特に銅板腐食試験で表される活性度が重要になります。活性度とは硫黄系極圧添加剤の銅に対する反応性の強さですから、活性度が強い程加工性は良好になりますが銅合金等の非鉄金属の加工の際に変色が起こる場合があります。したがって、これらの加工には活性硫黄を含まない油剤が適しています。

3.水溶性切削油剤の非鉄金属に対する影響
一般に、水溶性切削油剤の場合、さび止め性、耐腐敗性を考慮してアミン化合物を脂肪酸アミン塩として適用しアルカリ性にしています。したがって、銅やアルミ等の変色をおこすことがあり注意が必要です。また、最近携帯電話やノートパソコンへの需要が増えているマグネシウムの加工に水溶性切削油剤を適用した場合は、ワークの変色や切りくずとの反応による水素ガスの発生が考えられるため切りくず容器を解放にするなどその火災対策が重要となります。

参考文献
桜井、石油製品添加剤、第2版、幸書房
 
 

 
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