ID-124 グリースと消防法について |
1.概説 グリース(潤滑油の中に、増ちょう剤を分散させて半個体又は個体状にしたもの。特殊な性質を与える他の成分が含まれる場合もある。)について、消防法の関係で適用される、あるいは除外されるものとしては3つのケースがある。 (1)危険物第四類の危険物に該当するもの。 (2)指定可燃物(消防法第9条第3項)に該当するもの。 (3)上記のいずれにも該当しないもの。=非危険物 消防法では危険物は「別表の品名欄に掲げる物品で、同表で定める区分に応じ同表の性状欄に掲げる性状を有するもの」と定義され(消防法第2条第7項)、その判断は「その物品が法別表に掲げられている品名に該当するかどうか、また該当する場合は、その物品が法別表に掲げられている性状を有するかどうか、さらに性状がわからない場合にはその物品が危険物としての性状を有するのかどうかの確認をするため政令で定められた試験を行い、その物品が一定以上の性状を示すかどうか」により決定される、とある。 2.危険物の判定に係るフロー及び試験方法と性状 危険物であるか否かを判定するため、次表のようなフローにより、判定がなされ、各類に該当するか否かの性状を判定するための確認試験は、次表のような試験方法が定められている。 ![]() |
類 | 形状 | 危険性 | 試験方法 | 危険物となる性状の判定方法 |
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第 一 類 |
個体 (粉粒状のもの) |
酸化力の潜在的な危険性 | 燃焼試験 | 標準物質と木粉の燃焼時間と、試験部品と木粉の混合物の燃焼時間を比較して判定。 |
衝撃に対する敏感性 | 落球式打撃感度試験 | 試験部品と赤りんとの混合物に鋼球を落下させ、爆発率により判定。 | ||
個体 (粉粒状以外のもの) |
酸化力の潜在的な危険性 | 大量燃焼試験 | 標準物質と木粉の燃焼時間と、試験部品と木粉の混合物の燃焼時間を比較して判定。 | |
衝撃に対する敏感性 | 鉄管試験 | 試験部品とセルロース粉との混合物を鉄管内で爆発させ鉄管の破裂の程度により判定。 | ||
第 二 類 |
固体 | 火炎による着火の危険性 | 小ガス炎着火試験 | 小さな炎の接触により燃焼するかで判定。 |
引火の危険性 | 引火点測定試験 | 引火点測定器により引火点を測定し判定。 | ||
第 三 類 |
固体又は液体 | 空気中での発火の危険性 | 自然発火性試験 | 1.(固体)試験部品がろ紙の上で発火するかで判定。 2.(粉末)1.で発火しない場合試験部品を落下させての発火で判定。 3.(液体)試験部品を磁製の器あるいはろ紙に滴下して発火するか、ろ紙を焦がすかで判定。 |
水と接触して発火し又は可燃性ガスを発生する危険性 | 水との反応性試験 | 1.試験部品を純水で湿らせたろ紙上に置き、発生するガスが発火するか、火炎により着火するかで判定。 2.試験部品を純水に入れ、可燃性ガスの発生量で判定。 |
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第 四 類 |
液体 | 引火の危険性 | 引火点測定試験 | 引火点測定器により引火点を測定し判定。 |
第 五 類 |
固体又は液体 | 爆発の危険性 | 熱分析試験 | 試験部品の発熱開始温度及び発熱量を標準物質から求めた危険性の基準と比較して判定。 |
加熱分解の激しさ | 圧力容器試験 | 試験物質を破裂板を取り付けた圧力容器で加熱し、破裂板の破壊率により判定。 | ||
第 六 類 |
液体 | 酸化力の潜在的な危険性 | 燃焼試験 | 標準物質と木粉の混合物の燃焼時間と、試験部品と木粉の混合物の燃焼時間を比較して判定。 |
(注) | 粉粒状のものとは、目開きが2mmの網ふるいを回転させながら毎分160回の打振を与えてふるった場合に、当該網ふるいを30分間で通過するものが10%以上のものをいう。 |
危険物の判定試験の例 第四類の危険物の試験方法をフローで表すと次のようになる。 ![]() ![]() 3.グリースの消防法上の分類 詳細は個々の品物によって判定をする必要があるが、一般的なグリースを分類すると下記の表の形となる。 |
区分 | 第四類危険物 | 可燃性固体類 | 非危険物 |
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内容 | 1気圧において、温度20℃で液状であり、引火点が測定されるもの | 固体で、次のイ.ハ.又はニ.のいずれかに該当するもの(1気圧において、温度20℃を超え、40℃以下の間において液状となるもので次のロ.ハ.又はニ.のいずれかに該当するものを含む) イ.引火点が40℃以上100℃未満のもの ロ.引火点が70℃以上100℃未満のもの ハ.引火点が100℃以上200℃未満で、かつ、燃焼熱量が8,000カロリー毎グラム以上であるもの ニ.引火点が200℃以上で、かつ、燃焼熱量が8,000カロリー毎グラム以上であるもので融点が100℃未満のもの |
左記のいずれにも該当しないもの |
該当する例 | ほとんど液状に近いような軟質のグリースNLGIちょう度でNo.000等のグリース | グリースという呼び名で一般的な青ペト、白ペト、ギヤーコンパウンド等とか軟質のグリース、低融点のグリース等 | NLGIちょう度でNo.2とかNo.3のリチウムグリース等 |
「参考文献」 |
危険物取扱者 保安講習テキスト 平成11年版 |
「危険物の保安管理」一般編 財団法人 全国危険物安全協会 |
消防基本六法 東京法令出版 |