ID-329 グリースのきょう雑物測定について

 グリースには、通常、潤滑に悪影響を及ぼすような不純物、外来の異物や混入物などを含んでいないことが必要な条件となっています。精密な転がり軸受用のグリースの場合には、軸受の異常音や摩耗の原因となりますので、グリース中のきょう雑物の大きさや、その数を規定する場合があります。最近では家庭用電化製品、音響機器、事務機器などにミニチュアベアリングが多く使用されており、音響性能の面からグリース中のきょう雑物が問題になる場合があります。以下にグリースのきょう雑物の測定方法について述べます。

1.JISきょう雑物測定方法1)
 JIS K 2220.5.9に規定されている方法で、清浄な環境で、規定されたテンプレートの切込みにグリースを満たし、顕微鏡を用いてきょう雑物の大きさによってその数を測定します。
 テンプレートは、右に示す形状・寸法の厚さ0.1±0.01mmの金属板で、幅約10mm、長さ約20mmの切込みのあるものです。
 テンプレートをスライドガラス上に置き、テンプレートの切込みにグリースを満たし、カバーガラスではさみ、約100倍の顕微鏡を用いてきょう雑物粒子を10μm〜25μm、25μm〜75μm、75μm〜125μm、125μm以上の四つに分けて計数します。 規定の式により、グリース1cm当りの10μm以上、25μm以上、75μm以上及び125μm以上の粒子数に算出し、試験結果とします。
 JIS K 2220 転がり軸受用グリースの1〜3種には、次の規定があります。
きょう雑物
(個/cm
10μm以上
25μm以上
75μm以上
125μm以上
5000以下
3000以下
500以下
0  
2.ASTM有害粒子評価方法2)
 ASTM D 1404に規定されている方法で、2枚のアクリル板にグリースをはさみ、圧力をかけて30°回すことによりアクリル板に生じるきずの数を測定します。
 右に示す試験装置にアクリル板を装着し、グリースをつけます。装置を組立てアクリル板に1.38 MPa の圧力をかけた状態で、一方のアクリル板を30°回します。2枚のアクリル板に生じたきずを計数します。
 1.38MPaの圧力でアクリル板にきずをつける粒子が対象になります。二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を含有するグリースなどでは、顕微鏡を用いるきょう雑物として測定出来ないため、この方法が用いられる場合があります。

 きずの生じたアクリル板の例を右に示します。
参考文献;
1)JIS K 2220、日本規格協会編
2)ASTM D 1404-Standard Test Method for Estimation of Deleterious Particles
  in Lubricating Grease
 
 

 
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