ID-S78 クリーン環境用グリースの製造方法について
●グリースの製造方法 クリーン環境用グリースの製造は次の点に留意して行なわれている。 (1)作業環境の清浄化と密閉化 (2)異物混入の防止と混入異物の除去 (3)摩耗の生じにくい機器、配管の使用 (4)洗浄の容易なラインを組む 作業環境を清浄に保つ方法として、エアーシャワールームの設置、無塵衣の着用、室内作業者数の制限、室内空気の浄化などが行なわれている。作業環境の清浄性については、著者らが空気中微粒子自動計測器を用いて行い、クリーン環境用プラントの方が一般工業用プラントに比較し、1μm未満の微粒子の数で極端な差がでると報告している。また、製造工程は図1に示すように、一般工業用グリースと比較し、基本的に大差ない。塵あいなどの異物の混入防止、増ちょう剤粒子の分散、混入異物の除去などの観点から均質化工程(ロール処理)、ろ過・充填工程などが特に重要である。 ![]() 図1 クリーン環境用グリースの製造工程の一例 塵あいなどの異物の混入は耐久性、低騒音性に悪影響を及ぼすので特に注意を要する。異物の大きさが10μm以上となるとごみ音として検出されるので、原料中の異物の除去のみならず増ちょう剤を主体とする大きな粒子、基油に溶解しにくい添加剤の粒子などを上手に分散することも必要である。図2にHDD用グリースのロール処理前後の顕微鏡写真の一例を示す。 ![]() 図2 グリースのロール回数と粒子 ウレアグリースは粒子の分散がしにくいのが特徴である。また、図3、表1にリチウムグリースのロール回数とちょう度、トルクの関係を示す。ロール回数の増加とともにちょう度はやや軟化し、トルクはやや減少している。 ![]() 図3 ロール回数とちょう度、トルクの関係
ろ過・充填工程では製品容器の洗浄、製品のろ過などに十分注意を払う必要がある。異物除去のため孔径25μmのメンブランフィルターを用いて加圧下で処理した例はあるが、処理費用、処理速度の点で問題があり、現時点で量産型のグリース製造設備に適用するのは困難である。軸受のダウンサイジング化は厳しい低騒音性を必要とするので、グリースのろ過は、必然的に小孔径、高圧下で行わざるをえなくなるものと予想される。 表2にクリーン循環用グリースと一般工業用グリースとの比較を示す。
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