ID-134 微量塩素分の分析について


金属加工油剤では、過去より塩素化パラフィン等の塩素系極圧添加剤がそのコストパフォーマンスの高さから広く使用されている。しかし、これら塩素系極圧剤は1.焼却処理時に毒性の強いダイオキシンを発生する可能性があること 2.一部の塩素化パラフィンに発ガン性があると報告されたこと などから、各油剤メーカーでは塩素系極圧剤の代替検討が精力的に行われている。このような環境問題に関連した背景より、塩素分の分析、とりわけ微量の塩素分析が注目されている。ここでは、微量塩素分の分析法の中でも進歩が著しい機器分析法について概説する。

代表的な塩素分の機器分析法について、特徴を表1にまとめた。これらは以下に示すようにいずれも一長一短があり、試料あるいは分析の目的にあわせ使い分ける必要がある。
  1. イオンクロマトグラフィーは検出限界が低く信頼性も高いが、試料が水に溶けイオンとしての形態でなければ測定できない。
  2. 燃焼-電量滴定は試料の形態を問わないが、検出限界がイオンクロマトグラフィーより劣る。
  3. ICP発光分光では更に検出限界が劣るが、金属元素を含め非常に多くの元素の同時分析が可能である。
表1 各種塩素分析法の特徴
分析法
項目
イオンクロマトグラフィー 燃焼-電量滴定 ICP発光分光 *1
分析原理 (分離) イオン交換
+
(検出) 電気伝導度
酸素気流中で試料を燃焼し塩化水素ガスにする(1)。銀発生電極を含む電解液中に塩化水素を導入し(2)、電量滴定により濃度を算出する(3)。
O2、燃焼
Cl    →    HCl (1)
Ag++HCl →  AgCl↓+H+ (2)
Ag  →  Ag+ + e- (3)
アルゴンプラズマにより塩素原子を励起させ、発光した発光線強度により定量する。
適用試料 水系(Cl-であること) 液体および固体 水系 溶剤系
検出限界 10ppb 10ppm 100ppm 50ppm
妨害因子 水不溶物質(測定前にあらかじめ除去する) 硫黄、窒素を多量に含むもの臭素、ヨウ素との分別測定は不可能 発光線を吸収するO2等の物質

*1 塩素の発光線波長が真空紫外領域にあるため、該領域の測定が可能な機種に限られる。

最近では、燃焼-電量滴定とイオンクロマトグラフィーを組み合わせ、より適用範囲が広くかつ精度の高い分析法の開発が試みられている。今後も微量塩素分析法は、機器分析を中心に発展していくものと考えられる。

【参考文献】
実験化学講座(1990) p218〜225




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