ID-356 さび止め油に添加される添加剤にはどんなものがあるか | ||||||||||||||||||||||
サビ止め油に添加されているサビ止め添加剤には、どんなものがあるか、それらの種類について説明したいと思います。またサビ止め作用機構についても簡単に説明致します。 一般にスピンドル油、モーター油等の石油製品は特殊な添加剤を入れぬ限り、金属とのなじみは余り良くありません。また水や酸素をかなり良く溶解または浸透させます。従ってこれらを金属面に塗っても効果的なサビ止め膜は出来ません。 ところが、これらにある極性有機化合物を添加すれば、この化合物が金属ー油界面に吸着されて配向し、油を含んだ半剛体の格子を形成してサビ止め性を発揮することになります。 1.サビ止め添加剤の種類 サビ止め添加剤として現在使用されているものは、およそ次の5種類であります。
サビ止め油は以上の添加剤のほかに界面活性剤その他を入れ、基油に溶かし込んであります。添加剤も数種のものを組み合わせて使用することが普通です。 これはサビ止め試験に湿潤試験、格納試験、屋外暴露試験、塩水浸漬試験などの各種条件化での規格を課せられるため、1種類の添加剤のみではこれらの規格試験に合格させることが困難なためです。 2.添加剤の吸着とサビ止め作用 次にサビ止め剤の作用機構について説明します。 サビの原因は金属表面の水と酸素の存在および金属表面の不均一その他により、化学的および電気的作用によりサビが発生し進行するのです。したがって水分および酸素との接触を防止すればサビを防止することができるわけです。サビ止め油で金属表面を処理するとサビ止め油中の添加剤、すなわち極性分子が金属面に吸着し水分や酸素の吸着を阻止し、サビの発生を防止するものとかんがえられています。 極性分子が金属表面に吸着する場合に局部電池吸着説と全面吸着説がありますが、吸着位置に関しては定説はありません。前者の説によると添加剤の性質により、例えばカチオン系添加剤(例えば第4級アミン類R4N+)は陰極に吸着し(Cathodic Adsorption)アニオン系添加剤(例えばカルボン酸、スルホン酸)では陽極に吸着し(Anodic Adsorption)、アミン系添加剤は両極に吸着する(Mixed Adsorption)、と考えられています。 また後者はある実験結果から局部吸着説を否定し、金属表面全体にどこにでも吸着するといっております。 次に吸着層の構造とサビ止め性の関係について述べてみます。 吸着層は緻密で、厚く強固に吸着するほどよいとされます。したがって化学吸着した最超密配列膜が望ましいのです。 添加剤分子が金属面に吸着する際、金属面に直接接触している分子は化学吸着すると考えられています。化学吸着した添加剤分子は、
吸着層の性質は表面の粗滑表面物質の種類(酸化物、水酸化物、水和生成物など)とその均一性、化学吸着している分子間のVan der Waals力の大きさによってきまってきます。Van der Waals力は吸着エネルギーに大きく寄与していることが分かっているので、これが大きい場合、つまり分子が長ければ吸着力も大となります。このためサビ止め添加剤は分子量が大きい方が良いとされていますが、あまり大きすぎると油への溶解度が小さくなるので分子量にも限界があり、スルホン酸では300〜470が良いといわれています。 サビ止め油は添加剤の他は大部分が基油の炭化水素分子からなりたっております。基油は次のようにサビ止め作用上かなり重要な働きをしています。
などから、吸着分子を保護し油膜の厚さを保つことが主な働きであろうと考えられます。 以上サビ止め油の作用機構について簡単に述べましたが、さらに判りやすく模型図で説明しましょう。 まず極性分子が図1のように金属表面に化学吸着をなし分子層を作り、さらにその間隔および上層に物理吸着をなして緻密な吸着層を形成するものと考えられ、化学吸着した添加剤分子は金属がイオンになることを阻止し、金属原子の反応性を減じます。 ![]() 図1 サビ止め添加剤の吸着 また吸着層は腐食性物質(水分、酸性ガスなど)が図2に示すように金属表面に接近することを阻止することによりサビを防止すると考えられています。 ![]() 図2 サビ止め油の作用機構 またサビ止め油の基油である炭化水素は単独ではサビを防止する能力は殆どありませんが添加剤と共存した場合は、極性分子の吸着した間隔および上層に物理吸着し、脱着を困難にする重要な役割を果たすといわれております。 |