ID-L162 極圧添加剤とは |
潤滑剤は摩擦表面に適当な油膜を形成させ、金属接触を防ぐことより摩擦を減らし、摩耗や焼き付きを防止するために使用します。摩擦面の間に十分に厚い油膜が存在すれば金属同士の接触は全く存在しないので摩擦も低く、摩耗も無いに等しくなります。このような状態を流体潤滑と呼びます。さらに荷重が増加すると油膜が薄くなり、各所で金属同士の接触を起こすようになり、摩擦、摩耗が大きくなって来ます。そして最後には焼き付きが生じるようになります。このような状態を境界潤滑と呼びますが、このような条件でも摩擦、摩耗を減少させ焼き付きを防止するための添加剤が油性剤と極圧添加剤です。 油性剤と極圧添加剤を区別することは難しいのですが、ここでは便宜的に“油性剤は摩擦表面に吸着膜を作り、摩擦、摩耗を低減する化合物”、“極圧添加剤は摩擦金属表面と化学反応して皮膜を形成し、摩耗、焼き付きを防止する化合物”と定義します(参考文献参照)。 極圧添加剤は、摩擦面で潤滑膜が破断して金属同士の接触が起こったときの発熱により金属と反応し、摩擦面に皮膜を作ることにより摩耗や焼き付きを防止するものです。極圧添加剤により金属表面に生成する金属無機化合物の皮膜がもとの金属あるいは金属酸化物よりも融点が低く、せん断強さが低いために潤滑効果があると考えられています。したがって目的に応じて適当な活性度を持つことが必要であり、活性の強すぎるものは低温で反応して金属を腐食しますし、活性が弱すぎれば目的とする摩擦面で反応しなくなります。 極圧添加剤としては、硫黄、りん、ハロゲンを含む化合物、あるいはこれらの元素を2種類以上含む化合物、有機金属化合物があります。代表的な例を表1に示しました。 |
タイプ | 種 類 |
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硫黄系極圧添加剤 | 硫化油脂、ジアルキルポリスルフィド |
りん系極圧添加剤 | アルキルりん酸エステル、アルキル亜りん酸エステル |
塩素系極圧添加剤 | 塩素化パラフィン |
有機金属系極圧添加剤 | アルキルチオりん酸亜鉛 |
「参考文献」 日本潤滑学会:潤滑ハンドブック、養賢堂、(1987)278 |