ID-L164 天然酸化防止剤と合成酸化防止剤
酸化防止剤とは、石油製品や動植物油など、種々の自動酸化性物質に対して光や熱などの条件下で、酸素の作用を防止あるいは、抑制する性質をもった化学物質のことです。
- 天然酸化防止剤
昔は、衣食住を主として天然物資源により賄なってきましたが、その中に天然の酸化防止剤が存在して、石油や植物油の自動酸化による分解を自然に防止していました。
植物油中に広く存在するトコフェロールやゴマ油のセザモールなどのフェノール系化合物には、優れた酸化防止作用があることが知られており、食品添加剤として広く利用されています。
石油中では、芳香族化合物や硫黄化合物などに酸化防止効果が認められており、特に優れているのは、芳香族化合物の中では2環のナフタレン類、3環のアントラセン類、硫黄化合物では、ベンゾチオフェン類や、スルフィド系化合物であると言われています。
潤滑油基油の製造に関しては、石油精製が初期の頃は、精製の過程でこれら天然酸化防止剤をある程度残す製造方式がとられていました。
しかし、近年開発された合成酸化防止剤は、これら天然酸化防止剤よりも性能が優れるため、高度な酸化安定性を要求される現在の潤滑油の分野では合成酸化防止剤を使用するのが一般的となっています。
したがって、現在では、石油の水素化脱硫処理によってこれら天然の酸化防止剤成分は精製段階で除去されています。
- 合成酸化防止剤
現在は酸化反応と酸化防止機構の研究から、種々の合成酸化防止剤が機能別に開発されており、精製した潤滑油基油へ添加して使用されています。(ID-143酸化防止剤 参照)
合成酸化防止剤の機能別分類と代表例は以下の通りです。
1) ラジカル連鎖停止剤
DBPC(ジブチルパラクレゾール)などのフェノール系酸化防止剤やフェニルナフチルアミンなどのアミン系酸化防止剤が用いられます。
2)過酸化物分解剤
ZnDTP(ジチオリン酸亜鉛)などの硫黄やリンを含む化合物が用いられます。
3)金属不活性化剤
BT(ベンゾトリアゾール)、N,Nジサリシリデン1,2プロパンジアミンなどが用いられます。
参考文献
酸化防止剤ハンドブック(大成社)
吉野隆 潤滑経済 1999-2003,2,9
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