ID-155 不水溶性切削油剤の試験項目について
不水溶性切削油剤(以下、油剤と略記します。)の試験項目は、JISK2241−1997(切削油剤)で次の8項目について定められています。
1.動粘度
油剤の有する物理的性状の代表的なものであり、油剤選定の一つのめやすとなる特性です。
2.脂肪油分
摩擦係数低減効果のある油性向上剤(エステル等)の含有量を示します。油性向上剤は、境界潤滑において摩擦面の温度が常温〜150℃程度で効果があるといわれています。
3.塩素分
塩素化合物は、硫黄化合物とともに極圧添加剤の代表的物質です。塩素は、工具すくい面にせん断強さの弱い固体潤滑膜(塩化第1鉄)を作り、潤滑作用を示します1)。
4.硫黄分
硫黄は、塩素と同様、工具すくい面にせん断強さの弱い固体潤滑膜(硫化鉄)を作り、潤滑作用を示します。
5.銅板腐食
銅板腐食試験は、油剤に含まれる硫黄化合物の活性度を調べる方法です。活性硫黄化合物を含む場合には銅板の変色(黒褐色化)が大きくなります(3以上)。不活性硫黄化合物を含む場合および硫黄化合物を含まない場合には、銅板の変色は小さくなります(2以下)。
活性硫黄化合物と塩素化合物とを含む油剤は、構成刃先の抑制作用が強く、良好な仕上げ面が得られるため、難削剤の低速加工や仕上げ面精度の要求される加工などに効果を発揮します。高速加工に適用すると、化学摩耗により工具寿命が低下したり、腐食やさびの問題が発生することがあるため注意を要します。
6.引火点
引火点は火災と密接な関係があるため、使用上の重要な項目です。
油剤の多くは、第4類第3石油類(引火点70℃以上200℃未満)の危険物に属するため、タンクの大きさ、構造、および取扱いなどについては消防法の制約を受けます。なお、第4類第4石油類(引火点200℃以上)に該当する高引火点の油剤も市販されているため活用していただきたい。
7.流動点
油剤の低温における流動性を示すもので、油剤選定の一つの目安となるものです。
油剤の流動点は、ほとんどが−5℃以下を示しますので、厳寒の地以外は支障なく使用できます。
8.耐荷重能
油剤の耐荷重能を示すもので、油剤の潤滑性の一つの目安となるものです。曽田式四球法により測定します。 |