ID-165 カールフィッシャー式水分試験方法について
 
 
1.水分試験方法の種類

 JIS K2275−1996に原油及び石油製品中の水分を定量する方法が規定されています。試験方法の種類には表1に示す4種類があり、油種、予期水分濃度、妨害物質の有無によって適切な方法を選定する必要があります。
 

表1 水分試験方法の種類
試験方法 適用水分範囲 備考
蒸留法 0.05%容量以上
1. 水と油を乳化及び安定させる目的で使用される添加剤を含む試料(例えば、アスファルト乳剤)には適用できない。
 
2. 揮発性で水に溶解する物質(例えば、アルコール類)は、水分として定量される。
カールフィッ
シャー式
容量滴定法
 
カールフィッ
シャー式
電量滴定法
原油:
 0.02%以上
 5.00%以下
石油製品:
 20ppm以上
 
単位は、容量又は質量を示す。
1. メルカプタン硫黄分と硫化水素との合計が150質量ppm以上には適用できない。
 
2. 水以外でカールフィッシャー試薬と反応する物質(以下、妨害物質()という)を含む添加剤を添加した製品には適用できない。ただし、妨害物質を含んでいても水分気化装置を用いた場合に気化ガス中に妨害物質を含まない試料は、水分気化装置を用いて適用してもよい。
水素化物
反応法
0.05〜20容量% この方法は、ポータブル型で電気や火気を使用しないために、実験室以外の場所での測定に適している。
注 (*) 妨害物資には、次のものがあります。
   (1) 遊離アルカリ、酸化性物質、還元性物質、メルカプタンなど、よう素と反応する物質。
   (2) 二酸化硫黄、ピリジン又はメタノールと反応して水を生成する物資。
 
 
2.カールフィッシャー式水分試験の原理

(1)容量滴定法

 外気と遮断した滴定フラスコ内で試料を混合溶剤に溶かした後、水と定量的に反応するカールフィッシャー試薬で滴定し、遊離よう素によって滴定系中の分極電圧が急激に変化する点を電気的に検出して滴定終点とします。
 試料中の水分は、カールフィッシャー試薬1mlが水と反応するmg数(力価)、滴定に要したカールフィッシャー試薬量及び試料はかり採り量から求めます。

(2)電量滴定法

 外気と遮断した電解セルの陽極室に試料を加え、よう素の代わりによう化物イオンを混合したカールフィッシャー試薬を電気分解してよう素を発生させます。試料中の水とこのよう素が定量的に反応しますので、よう素を発生するために消費した電気量から水の量が求められます。
 この水の量と試料はかり採り量から試料中の水分を求めます。
 
 

3.カールフィッシャー式水分試験の特徴と試験の目的

 カールフィッシャー式水分試験方法は短時間で精度良く測定できる試験法ですが、妨害物質が多いのが欠点です。妨害物質が明らかな場合は他の試験方法に委ねなければなりません。また、油剤の組成が不明な場合には他の方法で確認することも必要です。
 金属加工油や潤滑油等の石油製品に混入する水分は、油剤の劣化、添加剤の分解あるいは機械や加工物のさび発生などの原因になりますので、油剤管理の上で水分の測定は非常に重要です。水分の混入が確認された場合には、混入原因を明らかにすると共に混入防止策を講ずることが必要でしょう。また、水分が混入した油剤は速やかに交換し、再生処理等によって水分を除去しなければなりません。

[参考文献]
  JIS K2275−1996 原油及び石油製品−水分試験方法
 
 

 
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