ID-169 シェル式四球試験法

 耐荷重能は摩擦面の接触圧力が高く、潤滑する油膜の破断が生ずるような極圧潤滑下で、潤滑剤が摩擦面の焼付きや融着などの損傷を防止する性能を示しています。耐荷重能は極圧性、耐焼付き性とも呼ばれ、ギヤー油、油圧作動油、各種の金属加工油など機構上、流体潤滑を保持しにくい用途に用いられる潤滑剤では特に重要です。これらの潤滑性能の評価には実機に則した装置によるものも多く用いられていますが、実験室的な評価方法である四球試験やチムケン試験なども比較的簡単に試験できるため、しばしば用いられます。ここでは四球試験の中でシェル式四球試験について触れます。

 シェル式四球試験はアメリカなどで用いられており、原理的には曾田式四球試験と同様に試料容器底に水平に固定された3個の固定球の中心上に回転球を押し付け、接触する3点を摩擦部としています。曾田式四球試験と異なる点は、試験球直径は12.7mm(1/2in)であり、負荷は重錘とレバーにより調整されます。試験方法にはシェル法として各種の方法があります。いずれも試験荷重ごとに試験球、試料油を換え、荷重を加えたあとにショック的に回転させます。荷重段階、回転時間、回転速度は方法により異なっています。表に一例としてASTM D2596−87の試験条件を示しました。
 なお、シェル式の仕様を取り入れた高速四球試験機はわが国独自のもので、シェル四球試験と同様の試験が可能です。500〜2500rpmの無段変速と油圧負荷方式により、操作と条件変更が容易になっています。
 


図1 シェル式四球試験機の概要
表1 シェル式四球試験法(例)
項目\試験法 ASTM D2596-87
鋼球径(mm) 12.7(1/2in)
回転数(rpm) 1770±60
すべり速度(cm/s) 68.0±2.3
負荷方法 レバー式によるショック荷重
報告 補正荷重、荷重摩耗指数(LWI)、焼付き荷重、その他

 
 四球試験による潤滑剤の耐荷重能に関する評価結果と実機における実用性能とは必ずしも一致しません。また四球試験は短時間での評価ですので、潤滑剤の経時変化の影響を受ける実機へ、その結果をそのまま適用するには注意が必要です。いたずらに四球試験値が高いものを優れた潤滑剤と考えることは危険であり、用途に適した最適な耐荷重能を有する潤滑剤を使用することが望まれます。

[参考文献]
  日本潤滑学会:潤滑ハンドブック,養賢堂,(1987)395
 
 

 
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