ID-185 グリースの酸化安定度試験について |
グリースの酸化安定性とは、空気中の酸素との反応によるグリースの酸化に対する抵抗性をいいます。熱によりグリースの酸化が進むと酸化生成物が発生し、油分粘度増加、スラッジの生成、網目構造の破壊などが起き、グリースは硬化または軟化し、潤滑寿命に至ります。一般的な金属石けんグリースは、金属成分が酸化の触媒となり、潤滑油より酸化されやすい傾向にあります。ウレアグリースは増ちょう剤に金属が含まれておらず、酸化安定性に優れています。酸化安定性の向上には潤滑油の場合と同様に酸化防止剤が使われます。 グリースの酸化安定度試験はJIS K 2220.5.8に規定されています。この試験は静的酸化の評価方法で、約20gの試料を5枚の試料容器にとり、ボンベに入れ、酸素圧0.76MPa、99℃にて100h後の酸素圧の減少を測定します。以下にJIS酸化安定度試験の概要を述べます。 試験装置はボンベ、圧力計、試料容器、試料容器保持器、恒温油浴などから構成されています。(図1参照) |
図2に示す試料容器(ガラス皿)5個に気泡が入らないように試料を4gずつ採ります。 試料容器を試料容器保持器に乗せます。 ボンベの中に試料容器保持器を入れ、圧力計を取り付けたふたをします。ボンベに酸素を入れ、ボンベ内の空気を酸素に置き換えて加圧します。 ボンベに漏れがないことを確認してから、99℃に保った恒温油浴に入れて、酸素圧を0.76MPaとし、100h後の酸素圧の減少を読み取ります。試験結果は0.005MPaのけたに丸めて報告します。 |
![]() 図2 試料容器1) |
JIS K 2220の転がり軸受用グリース1〜3種には、次の規定があります(表1)。 |
1種 (汎用) |
2種 (低温用) |
3種 (広温度範囲用) |
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酸化安定度 (99℃、100h)MPa |
0.069以下 | 0.069以下 | 0.049以下 |
この試験では、酸化による酸素の消費と揮発性物質の生成による圧力の増加とをバランスした圧力変化が測定されます。グリースの品質管理項目として用いられますが、動的使用条件下のグリース安定性の予想には適していません。 JISと同じ酸化安定度試験がASTM D 942に規定されています。 |
[引用文献] |
1) JIS K 2220 グリース |