ID-125 工業用ギヤー油 AGMA規格(粘度分類)について
 
 工業用ギヤー油は、国際的な規格としてISOが規格の制定を急いでいますが現在、JISと共に最も広く知られているのは、AGMAの分類と思います。
 
 AGMA(アメリカ歯車製造者協会:American Gear Manufacture's Association)は、産業用・工業用の各種歯車装置を幾つかのグループ(歯車の種類や荷重、使用温度など)に分類し、使用する潤滑油(ギヤー油)の粘度グレードや品質(極圧性など)から適油選定基準を定めています。また、選定基準に適合するギヤー油の品質規格や、潤滑管理さらには歯車の損傷分類などを取り決め、需要家の便宜を図っています。
 
 AGMAは使用されるギヤー油を表1のように分類していますが、粘度については数字に置換えて表示していますので表2にはAGMAの粘度分類とISO、JISなど他の規格との対比を示しました。次に、歯車装置の形式により標準仕様を次の様に定めています。
 
 (1)密閉歯車装置の潤滑油仕様については、AGMA 250.**
 (2)開放歯車装置の潤滑油仕様については、AGMA 251.**
 
 この分類により、表3から表7のように各種歯車装置に適用するギヤー油を分類していますが、これらの基準等は、各メーカーが製造する設備あるいは装置のすべてに適合する訳ではありません。使用する環境や負荷条件によっては、対象から外れることがありますので、ギヤー油を選定する場合はこの点十分に配慮する必要があります。
 
 
表1 AGMAによる工業用密閉歯車および
半密閉・開放歯車用ギヤー油の分類
密閉系
歯車用
AGMA
250.03
R&O型 鉱油に酸化防止剤、錆止め剤を添加したもの。
EP型 R&O型に極圧剤(SP系が多い)を加えたもの。
コンパウンド 鉱油に3〜10%の脂肪油または合成脂肪油を添加したもの。一般的にはウォームギヤ用として使用する。
合成油型 エステル、PAO、PAG等を基油として添加剤を添加したもの。ウォーム歯車や面圧が極めて高い場合や、特殊な運転条件下で使用する。
開放系
歯車用
AGMA
251.02
R&O型 鉱油に酸化防止剤、錆止め剤を添加したもの。
EP型 R&O型に極圧剤(SP系が多い)を加えたもの。
残さコンパウンド(希釈) 粘度の高いストレート鉱油またはブローンアスファルトに各種添加剤を加えたもの。油剤希釈型もある。
 
 
表2 AGMAの粘度分類とJIS,ISO等の粘度比較
動粘度
@40℃
mm2/s
AGMA粘度分類 JIS工業用分類 ISO
ASTM
粘度分類
R&O型 EP型
コンパウンド
1種
軽荷重用
2種
中重荷重用
32  −  − VG32  − VG32
46 1   − VG46  − VG46
68 2  2EP VG68 VG68 VG68
100 3  3EP VG100 VG100 VG100
150 4  4EP VG150 VG150 VG150
220 5  5EP VG220 VG220 VG220
320 6  6EP VG320 VG320 VG320
460 7  7EP VG460 VG460 VG460
7コンパウンド
680 8  8EP  − VG680 VG680
8コンパウンド
1000   8Aコンパウンド  −  − VG1000
1500 9  9EP  −  − VG1500
3200 10  10EP  −  −  −
4600 11  11EP  −  −  −
6800 12  12EP  −  −  −
32000 13  13EP  −  −  −
680@100℃ 14R  − R14,R15は使用時には
希釈剤をもちいる
1000@100℃ 15R  −
 
 
※※歯車の種類と使用される装置による区分け※※

 
 
 
表3 密閉歯車装置(平・はすば・やまば・かさ
・まがりばかさ歯車)の推奨油種

歯車装置の形式,寸法
          単位:mm
低〜中荷重 中〜高荷重
周囲温度 ℃ 周囲温度 ℃
平行軸
歯車
減速段数 低速歯車中心距離 −10〜15 15〜52 −10〜15 15〜52
一段 200以下
200〜500
500以上




2EP *2
2EP *2
4EP
4EP
4EP
4EP
二段 200以下
200〜500
500以上




2EP *2
4EP
4EP
4EP
4EP
4EP
三段 200以下
200〜500
500以上




2EP *2
4EP
4EP
4EP
4EP
5EP
遊星歯車 ハウジング外径 400以下
ハウジング外径 400以上


2EP
4EP
4EP
4EP
すぐば歯車,
まがりばかさ歯車
円すい距離 300以下
円すい距離 300以上


2EP
4EP
4EP
5EP
ギヤモータ 2EP 4EP
高速歯車*1
(注)*1: 3600rpm または周速 20m/s 以上のものは条件により、1グレード上または下のギヤー油を使用することがある
*2: 運転中、油だめの温度が50℃を超える場合は 4EPを使用する
 
 
表4 密閉ウォームギヤ装置に対する推奨油種
ウォーム
ギヤ
の形
中心
距離
mm
ウォーム
ギヤ
回転数rpm
周囲温度 ℃ ウォーム
ギヤ
回転数rpm
周囲温度 ℃
-10〜15 10〜50 -10〜15 10〜50
円筒 150以下 700以下 7comp 8comp 700以上 7comp 8comp
筒形 700以下 8comp 8Acomp 700以上 8comp 8comp
円筒 150〜300 450以下 7comp 8comp 450以上 7comp 7comp
筒形 450以下 8comp 8Acomp 450以上 8comp 8comp
円筒 300〜450 300以下 7comp 8comp 300以上 7comp 7comp
筒形 300以下 8comp 8Acomp 300以上 8comp 8comp
円筒 450〜600 250以下 7comp 8comp 250以上 7comp 7comp
筒形 250以下 8comp 8Acomp 250以上 8comp 8comp
円筒 600 以上 200以下 7comp 8comp 200以上 7comp 7comp
筒形 200以下 8comp 8Acomp 200以上 8comp 8comp
(注) ウォームギヤの回転数が 2,400 rpm以上 または すべり速度 10m/s 以上の場合は、強制潤滑が必要であり、その場合はこの表よりも低い粘度の潤滑油が使用される
 
 
表5 連続給油式の開放歯車に対する推奨油種
環境温度
℃ *1
運転状態 強制潤滑 はねかけ潤滑 浸漬潤滑
速 度(ピッチ線)m/s
5以下 5以下 5以下 5以下 1.5以下
-10〜15
  *2
連 続 5または
5EP
4または
4EP
5または
5EP

4EP
8〜9
8EP〜9EP
正・逆転 5または
5EP
4または
4EP
8〜9
頻繁な起動
・停止
7EP 6EP 8EP〜9EP
15〜50
  *2
連 続 7または
7EP
6または
6EP

7EP

6EP
11
11EP
正・逆転 7または
7EP
6または
6EP
9〜10 8〜9 11
頻繁な起動
・停止
9EP〜
10EP*3
8EP〜
9EP*4
11EP
(注)*1: 環境温度・・・運転中の歯車に近い部分の温度
*2: 使用温度が下限に機械場合は、油を適切に循環させチャネリングを防止するために適当な加熱装置を設置する必要がある。
*3: 環境温度が32℃以上の場合は、常に 10 または 10EP を使用する
*4: 環境温度が32℃以上の場合は、常に 9 または 9EP を使用する
 
 
表6 間欠給油式の開放歯車に対する推奨油種
環境温度  ℃
歯車装置近傍
機械スプレー方式 滴下(重力または機械式)
EP潤滑剤
EP潤滑剤 コンパウンド
−10〜15 14R
5〜38 12EP 15R 12EP
20〜50 13EP 15R 13EP
(注)(1) 開放歯車は グリースの使用も可能である。グリースのちょう度についてはメーカーの指示(取り扱い説明書 等)に従うこと
(2) コンパウンド塗布時には流動性を与えるために、希釈剤を用いる
 
なお、AGMAが定める工業用ギヤー油の品質規格等については、「AGMA規格(品質規格)」をご覧下さい。
 
 

 
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