ID-226 ギヤー油のさび止め試験について | |||||||||||||||||||||
ギヤー油はその特性の違いから、自動車や建設機械などに使用されるものと、工場などの設備の減速機などに使用されるものに分かれています。日本工業規格(JIS)では、K2219に表1のように分類しています。 さて、このギヤー油のさび止め試験ですが、JIS K2219 では、工業用ギヤー油については、JIS K 2510「潤滑油さび止め性能試験法」の蒸留水による試験を規定していますが、車両用ギヤー油については特に定めがなく、『備考』として、APIサービス分類のGL−3(JIS 自動車用1種)からGL−5(JIS 自動車用3種)のそれぞれの品質と同等以上であることとしています。
1.工業用ギヤー油のさび止め性能試験方法 この規格は、潤滑油に水 または 海水が混入した場合の鉄部に対する潤滑油のさび止め性能を試験する方法で、潤滑油は鉱油系および合成系を含みます。 工業用ギヤー油の場合は、蒸留水によって試験をおこないます。 |
(1) | 試験方法の概略は、恒温槽内に設置された容器に試料油を300ml採取し、毎分1000回転で攪拌します。60℃になれば、鉄製試験片を油中に挿入し、さらに蒸留水または人工海水を(ここでは蒸留水)30mlを試料油中に加え、60℃に保温したまま、24時間攪拌し続け、その後、試験片を取り出し、試験片のさびの発生状態を評価するものです。図1および図2この試験は、2個の試験片を一組として扱います。 |
![]() 図1 さび止め試験(試験容器部分) ![]() 図2 試験片 |
(2) | 評価方法は次の3段階に分けられます。 |
<1> | 2個の試験片のいずれにも表面にさびが認められない場合は、『さびなし』 |
<2> | 2個の試験片のいずれにも表面にさびが認められた場合は、『さびあり』 |
<3> | 2個の試験片のいずれか一方にさびを認めた場合は、再試験をおこない さびを認めない場合は『さびなし』とし、いずれか一方にさびを認めた場合は『さびあり』とします。 なお、『さびあり』の場合、必要に応じてさびの程度を「軽微」「中度」「高度」の形で表示します。 |
図3は、新品の試験片とさびの発生した試験片の参考例です。![]() 図3 さび発生の試験片例 2.車両用ギヤー油のさび止め試験法 JISに対応するAPIの規格とそのさび止め試験法は次のとおりです。
|
(注) |
CRC:アメリカ共同研究評議会 API GL−3は現在規格としては廃止。 |
ここでは、CRC L−33 の試験法の概略について述べます。 実車の後車軸(デフェレンシャル ギヤ)を切り離し、デフ・ハウジングの中に 2.5パイント(約1.2L)の試料油と1オンス(約28ml)の蒸留水を封入し、デフ・ハウジングを180°F(82.2℃)に加温し、モーターにより切り離した車軸を2,500rpmで4Hr駆動します。油温は、外部よりヒーターランプとファンを用いて制御します。 所定時間経過後、デフから試料油を抜き取り車軸ハウジングをストレージボックス(保温庫)の中に移して125°F(51.7℃)に維持して、7日間放置します。終了後、ハウジングを分解し各部分、特にバックプレートのさびの発生と変色の有無をみます。 車両用ギヤー油の試験は、JIS K 2510のように、浸漬してさびの発生をみる方法と試料油を一定時間試験片に塗布した後、種々の条件下で試験片を長時間放置してさびの発生をみる方法(より実車の条件に近い)とがあるようです。 日本では、便宜的にJIS K2510 でおこなうことが多いようです。 参考文献 JISハンドブック |