ID-232 フェログラフィー フェログラフィーとは潤滑油中の摩耗粉や混入異物をスライドガラス上に配列させ、それら粒子の形、大きさ、色などを顕微鏡で観察することによって機械の状態を診断する分析技術です。 この手法はSeifeltとWestcottによって開発されたものですが、1972年にFoxboro社からフェログラフアナライザとして市販されるようになりました。 本装置は、機械保守・故障予知、潤滑油や機械設備の性能評価などに極めて有効な手段であり、各種潤滑油の性能評価あるいは摩耗形態の把握などに応用されています。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1. 装置および分析方法 装置には定量フェログラフアナライザと分析フェログラフアナライザがあり、また前者には機械設備に取り付けて使用するオンラインタイプのものがあります。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.1 定量フェログラフィー 定量フェログラフィーは使用油に含まれる大きな粒子(5μm以上)と小さな粒子(2μm以下)の各濃度を調べることによって機械の診断を行う分析法です。 図1に同分析法の原理図を示します。 図1aに示すように磁石上に固定したプリシピテーターチューブ内に使用油を流すと、磁性を持った摩耗粒子は図1bに示すように大きさの順に配列し、沈着します。特殊な溶剤で同チューブ内の油分や異物(例:ディーゼルエンジン油中のすすやグリース増ちょう剤など)を除去した後、チューブの入口付近とそれよりやや下流をよぎるように光をあて、各々の透過光を検出することによって大粒子の光学密度DLと小粒子の光学密度DSを測定し、それぞれDRユニット(Direct Reading Unit)でディジタル表示します。DL値は5μm以上の、またDS値は2μm以下のそれぞれの粒子の量的目安を与えます。 正常摩耗状態ではDL値はDS値に比べてそれほど大きな値にはなりませんが、異常摩耗が発生し、その度合いが高まるにつれてDS値に対するDL値の割合が大きくなっていきます。このことからDL−DSの値は摩耗形態の異常度合いを知るひとつの目安となり、また異常摩耗が起こると全摩耗量も増えるのでDL+DSの値も異常度合いを知る目安となります。さらに摩耗過酷度(Wear Severity Index, Is)の指標として(1)式も広く使われています。
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![]() (a) 光学系 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() (b) プリシピテーターチューブ内粒子の粒度分布の模式図 図1 定量フェログラフィー原理図 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.2 分析フェログラフィー 分析フェログラフィーはガラススライド上に配列させた使用油中の摩耗粒子や混入異物を対象に、それらの量、形、大きさ、色などを顕微鏡で調べることによって機械の状態を診断する分析技術です。 図2に分析フェログラフィーの原理図を示します。 図2に示すように、磁石上にわずかに傾けた状態でガラススライドを固定し、この上に試料油を流すと、磁力と重力の作用により摩耗粉は大きさの順に配列します。定量フェログラフィーの場合と同様、特殊な溶剤でガラススライド上の油分を除去します。こうして得られたものをフェログラムと呼ぶ。図3にフェログラムの模式図を示す。 フェログラム上では鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体粒子は大きな粒子ほど磁石に誘引されやすいため入口付近に沈着し、小さな粒子ほど下流に沈着します。 フェログラム上には磁性物質ばかりでなく、酸化鉄(ヘマタイト、Fe2O3)、非鉄金属、有機物、無機化合物などの非磁性物質も沈着します。 以上のようにして作成したフェログラムをフェロスコープと呼ばれる2光源顕微鏡で観察しまする。 表1は各粒子の形態的特徴と主な発生原因ないしは混入経路を示したものですが、発生原因や混入経路は機械や環境などによって様々であるといえます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() 図2 分析フェログラフィー原理図 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() 図3 フェログラム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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