ID-252 粘度試験方法の精度

 潤滑油の基本物性である動粘度を測定するときの精度(許容差)は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に、透明な試料で15〜100℃の温度での測定条件において、室内併行許容差及び室間再現許容差が表―1のとおり規定されています。この室内併行許容差とは、JIS Z 8402「分析・試験の許容差通則」の中で、同一試料の測定において、人・日時・装置のすべて同一とみなされる測定条件での許容差と定義されていますが、日時については同一とみなせる条件として、引き続き短時間内に試験した場合、と試験方法では定義しています。また、室間再現許容差は、同一試料の測定において、試験室・人・日時・装置のすべてが異なっている測定条件での許容差と定義されています。

表1 精度(確率0.95)
室内併行許容差 室間再現許容差
平均値の0.35% 平均値の0.7%


 動粘度を算出するときに、懸垂液面形粘度計(ウベローデ等)及び改良オストワルド形(キャノンフェンスケ等)では、流出時間を2回測定したときにその流出時間の差が平均値の0.2%以内であれば、その平均流出時間を用いて動粘度を算出します。また、逆流形粘度計(キャノンフェンスケ不透明液用等)の場合は、2回の流出時間から動粘度を算出し、その差が平均値の0.35%以内であれば、その平均値を試験結果とします。このとき粘度計の種類によっては、1回の流下で1個の測定値が得られるものと、2個の測定値が得られるものがあるので注意する必要があります。なお、2回の流出時間及び動粘度が前述の範囲を超えた場合は、粘度計を洗浄するか交換して再び試験することになっています。
 動粘度の精度に影響を与える要因としては次のようなことが考えられます。

室内併行精度では
  1. 動粘度測定用恒温槽の攪拌不良やヒータの異常による温度のバラツキ、また槽内の場所の違いによる温度分布の異常。
  2. 粘度管汚れや測定試料中の異物等による流出時間のバラツキ。
室間再現精度では室内併行精度の要因に加えて
  1. 恒温槽用温度計を標準温度計で補正したときの補正値の違い。
  2. 粘度計の定数の違いやキャノンフェンスケ粘度計等の定数補正方法の誤り。
 以上のことに注意して測定を行えば制度の良い結果が得られるはずです。
 粘度指数の精度は、動粘度の精度から計算によって求められているので、動粘度の測定精度がそのまま影響を与えてしまいます。また、粘度指数が100以下の場合と100以上の場合とでは計算式が異なりますので注意が必要です。
国際規格での動粘度測定の精度は、ISO 3104で、表−2のように油種別にそれぞれ定められています。今後は、JIS規格のISO整合のために、この精度が取り入れられると考えられます。


表2 ISO 3104の精度(確率0.95)
試料及び試験温度 Determinability
(mm2/s)又は(s)
Repeatability
(mm2/s)
Reproducibility
(mm2/s)
油  種 試験温度
航空タービン燃料油 -20 0.0018y 0.007x 0.019x
軽油 40 0.0013(y+1) 0.0043(x+1) 0.0082(x+1)
基油 40及び100 0.0020y 0.0011x 0.0065x
潤滑油 40及び100 0.0013y 0.0026x 0.0076x
150 0.015y 0.0056x 0.018x
潤滑油添加剤 100 0.00106y1.1 0.00192x1.1 0.00862x1.1
石油ワックス 100 0.0080y 0.0141x1.2 0.0366x1.2
残さ燃料油 50 0.017y 0.015x 0.074x
80及び100 0.011(y+8) 0.013(x+8) 0.04(x+8)
表中のy及びxは2個の平均値

[参考文献]
  JIS K 2283-1993、日本規格協会  ISO 3104:1994
 
 

 
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