ID-357 潤滑油の分光分析について |
潤滑油の試験でよくスラッジや混入異物の分析法として分光分析で行った結果を示すことがあります。以下に分析方法と結果の見方を簡単に解説することとします。 分光分析とは分光器を用いる化学分析法を指すものですが、厳密に言いますと発光スペクトルと吸収スペクトルを利用する場合とがあります。 スラッジや混入異物の分析には一般に発光スペクトルを利用する発光分光分析が用いられております。 発光分光分析法の原理は、試料(金属元素)を電極間におき、高電圧を加えて放電すると試料は励起されて発光します。 この光は、各金属に固有の波長のあつまり(スペクトル)でありますので、プリズム(分光器)にかけると波長に従って分離します。この各金属元素特有のスペクトル中から特定の波長をえらび各金属元素の目印とします。(従って金属元素以外の元素たとえばClやSなどは分析の対象となりません) 分析は、試料を発光させ、光を各波長に分離し、その中に目印として定めた波長があれば、その金属が試料中に存在することが確認できるわけです。 また含量と光の強さに一定の関係がありますので定量分析も可能です。 まず定性分析の場合には、分析項目に応じて試料を直接発光させたり、一旦灰化して灰分を発光させます。(灰化処理すると試料の濃縮がおこなわれますので、微量の試料に適します。) 分析は、断続孤光放電により試料を発光させ、その光を分光器で各波長に分離し乾板上に撮影し、各金属元素の波長と比較して検知します。 分析結果の表示方法として、スペクトル線写真の黒化度に応じ、+++++、++++、+++、++、+、traceといゆ記号で判定量的に表示します。 この場合、traceは次表の検出限界に相当します。ですから同じtraceでも金属によって、その濃度は異なるわけです。たとえば、Fe;traceは試料中に数ppmのFeが含まれていることを示していますが、P;traceは200ppm程度のPが含まれていることを示します。 さらに言えば+が一つの場合でもCa;+とNa;+では10倍以上濃度が異なりますので、同じ金属元素では比較できますが異なった金属を+の数によって直接比較することは困難といえます。 しかし、一応+++++、++++は主体物質をなすことを示し、+が一つふえると大体1オーダー数値が上がる見当となっています。 |
検出元素 | Fe | Ni | Cu | Cr | Mn | Pb | Na | Mg | Zn | Co | V |
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溶液試料ppm | 5 | 10 | 0.5 | 5 | 1 | 10 | 50 | 0.1 | 10 | 20 | 5 |
粉体試料ppm | 1 | 15 | 0.1 | 15 | 1 | 10 | 50 | 0.05 | 10 | 20 | 5 |
検出元素 | Mo | Ca | Sn | Ag | W | K | B | S | P |
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溶液試料ppm | 10 | 0.1 | 50 | 5 | 50 | 400 | 10 | 20 | 300 |
粉体試料ppm | 10 | 0.05 | 30 | 10 | 100 | 400 | 10 | 20 | 200 |
(注)ただしこの検出限界は分析機器により多少の差があるます。 |
次に定量分析の場合には、分析試料と標準試料のスペクトルを同一乾板上に撮影し、目的元素スペクトルの黒化度を測定し、あらかじめ標準試料で作成した検量線を用いて定量しますが、発光分光分析法は、精度が低いため、現在では定量分析には原子吸光法など別の方法によるのがほとんどです。 |