ID-L243 潤滑油の混合と粘度の求めかた

 無添加油を除く異種類の潤滑油を混合することは、決してよくはありません。何故なら、近年の高度な機械は潤滑油に対する要求が高く、それに対応するため、添加剤の配合も複雑になってきています。それに添加されている添加剤同士が反応し、スラッジの発生などの可能性が考えられるからです。
 しかしながら、現在の使用油が何らかの理由で粘度増加あるいは粘度低下をきたしていて、粘度の調整が必要な場合、あるいはもっと深刻なケースとして、潤滑油の大量の流出や、冷却水の混入等で直ちに潤滑油を補給あるいは更油を行なわなければならないにもかかわらず、急に大量に準備することが不可能な場合、など異なった粘度の潤滑油(緊急避難的には他の油種でも)を混合しなければならないことがあります。ここでは、あくまでもこうした異状時に行なう『潤滑油の混合と粘度調整』としての考え方を示します。
 基本的に、混合可能な潤滑油は同一商品名のもの、または無添加油(無添加タービン等)と考えて下さい(添加タービン油は、近年の耐摩耗性作動油等と反応する場合があります)。また、商品名が異なる油種であっても、同一系統の添加剤が使用されていて混合可能なものもありますので、事前に納入メーカーに確認しておくことも必要でしょう。
 同一商品の異なる粘度の油をかき集め、混合して必要な粘度の油を作り出すことになりますが、潤滑油は可能な限り目標粘度に近いものから優先して混合して下さい。
 目標粘度を算出する方法は、幾つかありますが、現場で容易に行なえるのは、「ブレンドチャート」を利用する方法でしょう。このブレンド法は、簡易チャートによる方法と、JIS規格JISK2283付属書1(=ASTMD341-93)に定められた方法等があります。JIS規格では、この他同付属書1,2及び3において計算式で出す方法も参考として記載していますが、現場での粘度合わせでは「ブレンドチャート」による方法で十分と考えます。
 「表−1」は、もっとも簡単な簡易チャートですが、これは混合する潤滑油の同一温度での粘度がわかっている時に使用します。まず、低粘度油と高粘度油の粘度をそれぞれ両端にプロットし、両点を結んだラインに必要な粘度の交点をプロットして、その時の混合比率を横軸の数値から読取ります。
 「表−2」は、JISK2283付属書1,3.3に記載されている方法で、粘度−温度線図をそのまま活用します。目標とする温度と動粘度を図中にプロット(A点)し、混合使用とする潤滑油の粘度温度線図を引きます。A点を通り温度軸に平行な線を引き、混合使用とする高粘度油および低粘度油との交点をそれぞれB点,C点とします。AB間の長さとBC間の長さをできるだけ正確に測り、次の式に代入して混合比率を求めます。

 @高粘度油の混合%(容量%)=(AC間の長さ/BC間の長さ)×100

 A低粘度油の混合%(容量%)=100−高粘度油の混合%

 複数の異なる粘度油を混合する場合はこの操作を何回か繰り返し、混合割合を求めることになります。また、同一油種(同系統の油種)が足りなくて、無添加油でカバーする場合は、混合量が増えるほど添加剤濃度が低下しますので、この点十分に承知しておく必要があります(正規の商品が入手できたら、出来るだけ速やかにタンク内のオイルを一部抜いてでも補給する必要があります)。
 実際の混合は、少量の場合は、ドラム内で攪拌したり、タンクでは小型ポンプを使用してタンク内循環混合をするとよいでしょう。
 混合量が多い場合には、一度に全量入れるのではなく、空運転をしながらタンクの戻り管の近くから、低粘度油と高粘度油を徐々に入れるのがよいでしょう。
 このような処理を行った場合は、後から潤滑油製造メーカーに連絡し、今後の潤滑油管理についてのアドバイスを受けるようにして下さい。
【表−1】簡易式のブレンドチャートを使用する場合
(混合用潤滑油の同一温度での粘度がわかっていることが必要)

 ここでは、ISOVG22とISOVG68を用いてISOVG46の潤滑油とする場合の例です。
 高粘度軸の68にA点,低粘度軸の22にB点をプロットし、それぞれを結ぶ直線を引く。
 動粘度46の線を辿り、AB線の交点Cを求め、左右の粘度軸に平行に線を引き、高粘度油の割合、低粘度油の割合をみる。
 結果として、ISOVG68の高粘度油を、70%混合すればよいことがわかります。
【表−2】JISK2283付属書1,3.3を使用する場合
(混合用潤滑油の任意の温度2点の動粘度がわかっている必要がある)

 ここでは、100℃における
 動粘度13mm2/sの潤滑油を混合によって作油する場合をみます。
 @100℃線上で粘度13mm2/sの点に点をプロットする(A点)
 A混合使用とする潤滑油の粘度温度線図を作成する
 BA点を通り、温度軸に平行な線を引き、高粘度油の線と低粘度油の線との交点をそれぞれB点,C点とする
 CBC間の長さ;21.6mm、AC間の長さ;14.7mmを測る。
 D高粘度油の割合(%)=(14.7/21.6)×100=68%を混合すればよいことがわかります。


参考文献;JISハンドブック
No.25石油編
(2001年版)




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