ID-L212 不水溶性切削油剤のゴムに対する影響
 
 
機械のシール材など、ゴム製品の中には、諸種の液体に接触して使用されるものが多くあります。そして、水を始めとして酸やアルカリなどの薬品類、切削油、潤滑油などの油、ガソリンなどの燃料油、各種溶剤など、さまざまなものにさらされながら過酷な使用条件に耐えなければなりません。
ここでは、一般的なゴム材料の特長および各種化学薬品に対する適用例を示すとともに不水溶性切削油剤のゴムに対する影響を紹介します。

表1にゴム材料の特長を、表2に各種化学薬品に対する適用例を示します。

表1 ゴム材料の特長
名称 特長
ニトリルゴム(NBR) 耐油性、耐摩耗性、耐熱性
ポリアクリレートゴム(PAR) 耐油性、耐熱性
シリコンゴム(SR) 耐熱性、耐寒性、密封性、低圧縮歪性
フッ素ゴム(FR) 耐熱性、耐薬品性
ウレタンゴム(UR) 耐摩耗性、耐候性、耐寒性、高強度
クロロプレン(CR) 耐候性、耐屈曲性、耐薬品性
エチレンプロピレンゴム(EPDM) 耐候性、耐熱性、耐寒性、耐水性
ブチルゴム(IIR) 耐候性、耐薬品性、耐熱性、低圧縮歪性
天然ゴム(NR) 高強度、耐屈曲性


表2 各種化学薬品に対する適用例
薬品 薬品の代表例 適用ゴム材料
無機酸類 塩酸、硫酸、硝酸、燐酸 FR、CR、IIR
有機酸類 酢酸、シュウ酸、フタル酸 SR、IIR
アルカリ類 苛性ソーダ、アンモニア水、苛性カリ HR、IIR
塩類 塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム NBR、HR
アルコール類 エチルアルコール、ブチルアルコール NBR、IIR
ケトン類 アセトン、メチルエチルケトン SR、IIR
エステル類 酢酸エチル、酢酸ブチル SR
アミン類 トリエタノールアミン、ジブチルアミン IIR、
脂肪族類 プロパン、ブタン NBR、PAR、FR
芳香族類 ベンゼン、トルエン、キシレン FR、

次に、機械のシール材に使用されるゴム材料に対する不水溶性切削油剤の影響を表3に示します。

表3 ゴム材料に対する不水溶性切削油剤の影響(一例)
油剤(JIS分類)
NBR
PAR
FR
SR
1種
A
A
A
B
2種
B
C
A
D
(注)2種に該当する油剤は、塩素系の添加剤を含有しています。
(表示) 影響少ない ← A < B < C < D → 影響大きい

不水溶性切削油剤1種では、比較的ゴムに対する影響が少ないことがわかります。
しかし、不水溶性切削油剤2種では、ゴムに対する影響が大きくなります。これは、2種に該当する切削油剤は、塩素系の添加剤(塩素化パラフィンなど)を含有しており、この化合物がゴムに対して、可塑剤的な働きをするためと考えられます。
一方、ゴムの中では、フッ素ゴム(FR)が不水溶性切削油剤の影響を受けにくいようです。
なお、同じゴム材料でも、試験に用いるゴムの種類により上記傾向は大きく変わることがありますので、ゴムに対する不水溶性切削油剤の影響による事故を防止するためにも、実際に試験を行いその影響を十分確認した上で使用することが望ましいでしょう。

【参考文献】
日本ゴム協会東海支部編:ゴム技術のABC,日本ゴム協会東海支部,(1973)
潤滑経済別冊 Q&A
 
 

 
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