ID-S12 自動車に使われるすべり軸受について
 
 自動車に使われるすべり軸受について。
 自動車に使われるすべり軸受の代表例はエンジンとミッションに使われる軸受です。中でもエンジンに使われるすべり軸受は大きな負荷を支えています。その大きさを図1に示しますが将来的に面圧がさらに増加することが予想されます1)。これは摩擦ロス低減のための軸受の小型化(径、巾ともに減少)が進むためです。面圧の増加は油膜厚さをさらに薄くするため、軸受はもちろん、周辺部品の加工精度もより高い水準にすることが必要となります。クランク軸を使うエンジンではハウジングは半割りであるため、真円度等の加工精度を確保することはたいへん困難な課題となっています。
 
 

 
図1 エンジン軸受の負荷
 
 ではまず、エンジンに使われるすべり軸受の材質についてみてみます。
 すべり軸受のライニングとして用いられる合金はこれまで表1に示す銅合金、アルミニウム合金が主です2)。しかしこれらの合金が市場のニーズに100%応えているわけではありません。まず銅合金の問題は腐食摩耗です。図2に長期間使用した銅合金軸受の断面組織を示しますがライニング中の鉛が腐食によって消失し、中には外力によってライニングが挫屈しているものもあります3)。ライニングの挫屈が発生すれば当然焼付きが起こります。この問題の対応策として図3に示すようにライニング中の鉛の分布を微細にし鉛量を少なくした銅合金が開発され実用され始めました4)5)。アルミニウム合金の問題はなじみ性の悪さによる耐焼付き性に対する信頼不足と高油温化使用での耐疲労性の不足です。これらの問題は高回転するエンジンほど顕著です。これらの問題の対応策として、アルミニウム軸受の表面に鉛メッキに変わって錫メッキをした軸受が開発され使われ始めています。錫メッキは図4に示すように一般の鉛メッキの厚さ(15〜20μm)より5μmと薄いです5)。この錫メッキをしたアルミニウム軸受は欧米、日本で使われ始め、今後拡大すると予想されます。
 
表1 エンジン用すべり軸受合金
 
  相当規格 化学成分(wt%)
種 類 JIS SAE Cu Pb Sn Al In Cr Si
銅鉛合金 KJ4 49 bal 24 <1.25
銅鉛合金 LBC6 799 bal 23 3.5
アルミ合金 1 2 12.5 bal 0.2 2.7
アルミ合金 783 1 20 bal
 
 

 
図2 長期間使用された軸受断面組織
 

 
図3 鉛が微細に分布した銅合金断面組織
 

 
図4 錫オーバーレイ付アルミニウム合金軸受断面組織
 
 次にミッションに使われるすべり軸受けについてみてみます。
 ミッションに使われるすべり軸受にはすぐれた耐摩耗性(耐フレッティング摩耗を含む)と耐食性が要求されます。ミッションに使われる軸受は常時回転しているわけではなく、定まった変速段階のみ回転し、その他は停止しています。停止中は車輌等の振動を受けるため、フレッティング摩耗現象が発生します。またミッションに使われる潤滑油はギア等の摩耗を防止するため、多くの添加剤が添加されており、使用する期間も長く、軸受の腐食摩耗が発生しやすくなります。その対応策として、耐摩耗性、耐食性のすぐれたすべり軸受として図5に示す硬質物を分散させた銅・鉛合金軸受が一部に使われ始めています6)
 
 

 
図5 硬質を分散させた銅・鉛合金断面組織
 
「参考文献」
  1)
月刊トライボロジP.79、10.1992
  2)
月刊トライボロジ P.35 12.1992
  3)
Shozo Sasaki et al:SAE Technical Paper 870582(1987)
  4)
George C. Pratt at al:SAE Technical Paper 860355(1986)
  5)
U S Patent 4818628,4904537
  6)
大豊工業(株)カタログ(1992)
 
(大豊工業 技術管理部)

「出典」
  すべり軸受Q&A 月刊トライボロジ1993.4 p33,1993.5 p34
 
 

 
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