ID-S14 軸受の寿命を延長するには |
軸受の寿命を延長するには 寿命を伸ばすには、軸受の改善と共に軸やハウジング、潤滑管理など軸受周辺環境条件を含めた総含的な整備・改善が必要です。以下に主な方策の概要を述べることとします。 (1)軸受材料の改善 アルミ合金軸受は耐摩耗性や耐食性は問題ないが、高温下での耐疲労性やなじみ性の課題があり、軸受合金の高温強度、薄膜オーバレイなどでのなじみ性改良が必要です。銅鉛合金は逆に耐摩耗性や耐食性が課題で、合金成分や組織の改良開発が望まれます。 (2)軸、ハウジングの改善 軸受は流体潤滑をいかに上手く作るかがポイントであるといえます。このために、相手側の精度・剛性の影響は非常に大きく、粗さ・真円度・真直度等の形状公差と片当たり防止からの剛性確保が大切です。図11)は軸の真直度の影響を理論解析で油膜厚さを求めた例を示しますが、軸真直度が悪くなると急激に油膜が薄くなり焼付き易くなることが予測できます。図22)は基礎評価した例を示していますが、計算結果を裏付ける結果が得られました。図33)は直4−1.6Lガソリンエンジンでの軸粗さと軸受摩耗の評価例ですが、摩耗には軸粗さの影響が大きいことが伺えます。また剛性不足による片当たり、ハウジングの精度も影響が大きく、寿命延長には相手精度の向上や剛性の確保が重要であるといえます。 |
(3)潤滑管理の改善 市場におけるすべり軸受トラブルの大半は表14)に示すように異物や潤滑油不足など潤滑管理に起因するといわれています。適時のオイルメンテナンスの実施と油膜を破断し軸や軸受をいためる異物の排除は寿命延長には不可欠です。また潤滑油は、使用時間と共に劣化や酸化するため、軸受の腐食や摩耗に影響が大きく、今後さらに油交換時期の長時間化の動きもあることから、より粘度変化や劣化の少ない潤滑油の開発が望まれます。 |
項目 | 比率 | 詳細内容 |
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異物かみ込み | 44.9% | 軸受裏金とハウジングの間、潤滑油中など |
組立て不良 | 13.4 | 軸受キャップとハウジングの心違いなど |
寸法不良 | 12.7 | ジャーナル円筒変形、偏心など |
潤滑不良 | 10.8 | 給油方法不適、油量不足、過熱など |
加重過大 | 9.5 | 摺動面の寸法不足、すべり速度、過熱など |
腐食 | 4.2 | 潤滑油の不適、劣化、材質の不適など |
その他 | 4.5 | − |
「参考文献」 | |
1),2)Shozo Sasaki, et al.:SAE Paper 870581(1987) | |
3) |
Yoshinori Yamaguchi, et al.:SAE Paper 892114(1989) |
4) |
星 満:自動車の潤滑入門(1979) (大豊工業 技術管理部) |
「出典」 すべり軸受Q&A 月刊トライボロジ1993.9 p35,1993.10 p59 |