ID-S15 滑り軸受に発生する損傷にはどのようなものがあるか
 
 すべり軸受に発生する損傷には、どのようなものがあるか。
 すべり軸受はエンジン用軸受に代表されるように、苛酷な条件下においても優れた性能を発揮し、高い信頼性を得ています。ところが、これらのすべり軸受も適切な潤滑とそれに応じた軸受周辺設計がなされなければ、異常な摩耗や焼付きなどが短時間で発生します。
 以下にすべり軸受に発生する軸受損傷について述べます。
 すべり軸受に代表されるエンジン用軸受は流体潤滑状態で使用され、理論的には連続運転中において固体間の接触は起きないはずです。しかし、実際にはいろいろな要因により固体間の接触を避けられず、流体油膜を破ってしまい、摩耗が生じて重大な損傷につながる実例があります。
 すべり軸受における損傷を大別すると次の6つが挙げられます。その損傷モードと概要を表1に、また特性要因図を図1に示しました。
 
表1 代表的な軸受損傷モード
 
損傷モード 解    説
異常摩耗 ハウジング、クランクシャフトの精度不良および異物などにより発生したきずを伴った偏摩耗、局部摩耗など異常な摩耗をした現象をいう
焼付 油切れ、過小すきま、高速、高荷重、片当りなどによって、摺動面間が金属接触となり、激しい発熱、表面流動、かじり、凝着が発生し、摺動面の完全固着すなわち焼き付きに至った現象をいう
疲労 ライニングにクラックが発生し、それが成長してライニングと裏金の遊離、すなわち剥離に至る 剥れ周辺部は不規則な形状をして亀裂を伴う また局部的な強い当たりがあると、軸受けが発熱して油膜厚さが薄くなり、軸と軸受が金属接触して、軸受表面のライニングが塑性流動を起こし、これが進行すると溶融剥離に至るこれらの現象を疲労という
腐食 潤滑油と軸受合金中の鉛が化学反応して、潤滑油が運転中に酸化(劣化)し、有機酸や酸化物を生成することにより、オーバレイおよびライニング中の鉛が選択的に腐食された現象をいう
キャビテーション
エロージョン
潤滑油中に発生したキャビティが高い圧力のもとで崩壊したときのエネルギーが軸受表面を侵触的に破壊する現象であり、キャビティの発生は、潤滑油の高速剪断によるもので、油路などの障害により発生しやすい
フレッチング
コロージョン
しめしろ不足、ハウジングの剛性不足などにより、軸受の背面または合わせ面で金属間の微振動(摺動)が発生して、微少な表面酸化、凝着、剥離などを繰り返し発生した現象をいう
 
 

 
図1 軸受損傷の特性要因図
 
「出典」
  すべり軸受Q&A 月刊トライボロジ1994.3 p40
 
 

 
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