ID-S19 すべり軸受を扱う上での異物以外の注意事項について |
すべり軸受を扱う上での異物以外の注意事項について。 まず打痕・ばり・きずなどについてはどのようなことに注意が必要かをみてみましょう。 打痕・ばり・きずなどは、異物と同様に線状きず・異常摩耗・局部当りなどが発生し、軸受の早期の焼付き、疲労の原因となるので細心の注意が必要です。次に、軸と、ハウジングに分けて注意を述べます。 @ 軸への注意 ●打痕:図1のように取り扱い時に発生させた打痕により、軸の表面に突起があると軸受の線状きず、異常摩耗の原因となります。 |
●油穴の面取り:図2のように軸の研磨時において、油穴の面取りが十分とられていないとばり立ちが発生し、軸受への線状きず、異常摩耗を起こす原因となります。したがって、軸の油穴はR面取りなどで滑らかに逃がすことが必要です。 |
A ハウジングへの注意 ●ばり、打痕による軸受の変形:図3は、ハウジングの爪部にばりがあるとき、爪部で軸受がのりあげたり、軸受の変形を起こしたりした例で、軸受の局部疲労、フレッチングの原因となります。 とくに、軸については軸受の摺動面、ハウジングについては軸受組み付け面への打痕・ばり・きずなどを発生させないよう、十分な注意が必要です。 |
その他の注意について、主なこととして次のことが言えます。 @ ピストン挿入時につける打痕・きず コネクティングロッドを組んだピストンを組み付けるときに、図4のように軸にボルトが当たり、軸表面に打痕・きずをつけることがあります。このため、先に述べた軸受損傷が発生するため、ボルトに保護キャップなどの装着も必要であるといえます。 |
A 軸受組み付け時の注意 ●コンロッドボルトなどの軸受組み付け部の締め付け力は、定められた軸力またはトルクを厳守することが重要です。締め付け力が小さすぎたとき、軸受に高負荷がかかると軸受が微振動し、軸受の背面にフレッチングコロージョンが発生して、疲労や焼付きの原因となります。 また降伏締めの場合、分解の繰返し回数に十分な注意が必要です。これは締め付けの繰返しによりボルトが伸びきって、ボルト折損の原因となります。 ●ハウジングに軸受を組み付けるときは、図5のように、最初に軸受の爪をハウジングの爪みぞにはめてから挿入します。これは、ベアリングの爪かみを防止する上で、重要なことです。 |
●軸受を組み付ける直前には、軸受のすべり面に、エンジンオイルなどの清浄なオイルを薄く塗布します。 これは、オイルポンプから潤滑油が給油されるまでの間の、軸受の異常摩耗や焼付きを防ぐために有効です。 |
(大豊工業 第1技術開発部) |
「参考文献」 大豊工業(株):軸受デザインガイド(1992) 「出典」 すべり軸受Q&A 月刊トライボロジ1994.6 p35 |